「キャッシュレス決済」という決済システムに、今、注目が集まっている。政府は来年秋の消費税増税に合わせ、キャッシュレス決済の利用者への優遇を検討している。消費税増税に伴う消費の冷え込みを防ぐとともに、普及も狙った格好だ。今後、より拡大するであろうキャッシュレス決済について、その基本を解説すると同時に、慶大での利用状況に迫る。

キャッシュレスとは

キャッシュレス決済の概要について、経済産業省の消費・流通政策課でキャッシュレスを担当する、海老原要さんに聞いた。

そもそもキャッシュレス決済とは、その名の通り現金を使わずに支払いを行うことだ。代金が支払われるタイミングに応じて、前払い方式・即時払い方式・後払い方式の三つに分類される(表1)。最近街中で見られるようになったQRコード決済は、サービスによって支払いの時期が異なる。

消費者側のメリットとしては、「利便性の向上」が第一であるが、紛失時や不正利用時の補償を始めとして、安全性の面でも利点がある。

一方で、デメリットとしては、使い過ぎの心配や、災害時に利用できない可能性が指摘されている。これらの問題について海老原さんは「例えば、カードと家計簿アプリを連携することで消費が可視化され、使いすぎは防げる。災害時の対応に関しては今後協議を進めていく」と説明する。

慶大での利用は

メリットもデメリットもあるキャッシュレス決済、慶大での普及はどうだろうか。写真は昼休みの日吉購買部の様子だ。現金支払いのレーンは混雑しているが、今年夏に設置されたSuica・PASMO専用レーンは比較的空いている。日吉キャンパスに通う人は、このような場面に遭遇したことがあるのではないだろうか。

慶應生協日吉購買部店長の花塚理英子さんによると、日吉購買部の全会計のうち、交通系電子マネーでの支払いは2~3割、クレジットカード・デビットカードでの支払いは5%程度だという。花塚さんは、「混雑時にはぜひ電子マネーで決済してほしい。店舗側には手数料負担が生じるが、組合員の皆さんの待ち時間を減らすのが何よりも大切だ」と訴える。

キャッシュレスの未来

経済産業省の算出によると、日本のキャッシュレス決済比率は諸外国に比べ低い(表2)。キャッシュレス化が進む韓国から慶大に進学した、ユン・チャンヒョクさん(文1)は、「韓国ではクレジットカード1枚と携帯電話を持って出かけることもあった。3年前に日本に来た時、マクドナルドでクレジットカードが使えないことにかなり驚いた」と振り返る。

便利な点が多いキャッシュレス決済だが、全国的にも、そして慶大においても、十分に広まっているとは言えないだろう。キャッシュレス決済にまつわる「なんとなく怖い」を抜け出した先には、意外と便利な世界が広がっているかもしれない。

(太田直希)