昨年11月、高校と大学の教員らで作る「高大連携歴史教育研究会」が、大学入試で歴史の細かい用語が出題され、高校の授業が暗記中心になっているのが問題だとして、教科書の本文に載せ、知識を入試で問う用語を現在の3500語程度から約半分にする方針を提案した。この件について歴史研究家で多摩大学客員教授の河合敦さんに話を聞いた。

河合さんは今回の用語の大幅削減について、生徒たちが実際に用語が多すぎて学びきれていない現状を踏まえつつ、精選案に賛成している。さらに、2022年度から始まる新学習指導要領に合わせて、歴史教育だけでなく高校教育全体が大きく変わるだろうと河合さんは述べた。現在の日本の教育方針として、生徒の学びに対する主体性を重視したアクティブ・ラーニングを推し進めている。それに合わせて、歴史教育もこれまでの用語の丸暗記などの詰め込み重視の方針から、歴史的思考力の育みを重視する方針へと変化していくだろう、と述べた。

なぜ覚えるべき用語が 増えていったのかという疑問に対して、最大の原因は大学入試だと河合さんは推察する。主に私大の入試において、未だに細かい瑣末(さまつ)な用語の知識が要求されている。そこで、その用語までをも補おうとする教科書会社との関係も絡んだことが、今日の用語増大の最大の原因となっているのだという。

歴史教育のあるべき姿としては、第一になぜ歴史を学ぶのかということを考えてみてほしいと河合さんは述べる。「過去に起こった大きな事件や出来事を学ぶことによって、自分の将来や人生に役立てることができる、それが歴史を学ぶ最大の意義だ」と語る。

今後、精選案が実際に教育に反映されるか否かは文科省や日本学術会議の動き次第だが、間違いなく今後はアクティブ・ラーニング型の思考力や判断力重視の教育が行われていく、と河合さんは指摘する。さらに、22年度から日本史や世界史の融合科目である「歴史総合」 が新たな科目として新設されるにあたり、近現代重視の全く新しい歴史教育が実践される見込みだ。

(村井純)