塾高生が新種発見 「オール慶應」が支えた挑戦

慶應義塾高校の生徒が発見した貝の化石が、‌昨年11月14日付けで正式に新種と認定された。

研究を進めてきたのは、3年生の吉村太郎さん。吉村さんは、もともと貝を収集し標本にするのが趣味だったという。海岸等を巡って集めた貝は1‌0‌0‌0種にものぼる。

今回新種と認定されたのは、吉村さんが中学2年生の時に発見したものだ。富山の地層で見つけた、イタヤガイ科の貝の化石である。4年間かけて研究をすすめ、その成果をまとめた論文が、古生物学の国際誌である「Paleontological Research」に受理される形で認定された。

これまで、イタヤガイ科にはもう新種がないと考えられてきた。吉村さんは詳細な形態解析を通じ、既存の種との有意差を複数見いだして、新種であると結論づけた。

ここまでの道のりは簡単なものではなかった。研究に必要なデータを集めるために、全国各地の博物館や漁港に自ら連絡を取った。そして30産地以上から集めた4‌0‌0個体以上にもわたる貝を、ひとつひとつ多数の項目ごとに調査していった。時間も根気も必要な作業だ。夜遅くまで学校の地学室に残る日々が続いた。

学術的にも難しいことが多かった。研究に必要な知識は、地学分野には留まらない。ロシア語などの外国語で書かれた論文を読んだり、測定値を統計処理したりと、高校で身につける知識では難しいような、多分野にまたがった知識が不可欠だった。

それでも研究を進め新種認定という形で実らせることができたのは、慶應義塾という場があったからこそだと吉村さんは話す。一人では出来ない部分をカバーしてくれたのは、慶應義塾高校・大学の先生らだった。「この学校には、高校生の自分が研究し論文を書くことを認めてくれる気風があります。手伝ってほしいと言うと、先生方は快く引き受けてくれました」

彼は、慶應ならではの様々な知識の結集による協力を、「オール慶應」という言葉で表現した。

卒業後は、慶應義塾大学に進学する予定だ。しかし、地学の勉強ができる理工学部には進まないという。「大学では法律を学び、研究は別で進めていきたいと考えています。現在の研究を進めていける研究室がないことも理由の一つですが、社会の仕組みを専門的に理解し、それにコミットしていける科学者になりたい」と話す。

現在も空手の国体強化選手に選ばれており、その練習が忙しいという。自分の興味や可能性に、自ら範囲を設けることはしない。

吉村さんは現在、二枚貝の性的二型(生殖器以外に現れるオスとメスの違い)に関する研究を進めている。この研究は、昨夏の国際学会で最優秀賞を受賞した。

高校生という若さをものともせず研究に打ち込む、若き研究者の将来に期待したい。
(神谷珠美)