ロボットに乗る教授
ロボットに乗る教授

誰もが年齢、体格差や障害を気にすることなく対等に戦えたら。オリンピックでもパラリンピックでもない、全く新しいスポーツの祭典が実現されようとしている。

「超人スポーツ」という全く新しい運動の楽しみ方を提唱している教授がいる。慶應義塾大学メディアデザイン研究科の稲見昌彦教授だ。

そもそも「超人」とは、技術と人間とが一体となることによって、人間が本来持っている以上の力を発揮できるようになった状態を指す。

超人スポーツは、人間がそのように「人機一体」となった状態でスポーツをすることで、プレーヤーそれぞれの年齢差や身体差を埋め、スポーツに挑戦する機会を平等に創り出すことを目的としている。

現在、具体的な構想段階に入っている超人スポーツのジャンルのひとつに、ブラインドサッカーがある。ブラインドサッカーとは本来、目の不自由な人々のために作られたサッカー競技である。  

その道のプロであるブラインドサッカー協会と協力し、プレーヤー同士がぶつかりにくく、誰にでも親しみやすい、安全な競技にしようと試みている。身体差のある人々が同時に楽しめることが超人スポーツの目指す形なのだ。

ブラインドサッカーの他にも、映画『ハリー・ポッター』に登場する魔法界のスポーツ「クィディッチ」や、ロボット義足を使った陸上競技などが実現に向けて構想されているという。

稲見教授が「超人スポーツ」の構想を練り始めたのは、2013年の10月。2020年の東京オリンピック・パラリンピックが決定した頃だ。

技術だけではなく、日本固有のポップカルチャーや体育科学など様々な分野の研究者を集めた「超人スポーツ委員会」を2014年10月に発足させた。そして今年にはより具体的なイベント実現に向けて企業やメディアの協力者と共に「超人スポーツ協会」を立ち上げた。

「テクノロジーを活用することで、どんな人でも同じフィールドで戦えるようにしたい」と稲見教授は繰り返す。まるで夢のようなこのアイデアも、その実現に向けて、技術面だけではなく様々な知識を組み合わせることで、より現実的なものとなってきている。

オリンピックでも、パラリンピックでもない、技術・ポップカルチャー・身体の三要素が融合した日本発の「超人スポーツ」の祭典を実現するために、まず直近の目標は2020年の超人スポーツ5種競技の世界大会開催であるという。

誰もが平等に参加して戦える、そんな日本発のスポーツが世界中で楽しまれる未来は、もう目の前に見えてきている。 (平沼絵美)