力強く弓を構える小野さん

日吉キャンパスの奥にあるマムシ谷。青々とした緑の中を歩いて行くと、志正弓道場が見えてくる。ここで体育会弓術部の選手たちが日頃から技を研さんしている。その一員である小野和也さん(法2)は昨年度、1年生ながら全関東学生弓道選手権大会において個人優勝を果たした。

大きな結果を残した彼だが、初めて弓を手にしたのは塾高入学のとき。活躍する多くの選手が中学以前から弓道を始めているのに対して、小野さんの開始時期は決して周りより早いとはいえない。経験年数の少ない彼がこのような偉業を成し遂げられたのは、練習に対する真摯な態度にあった。

練習に関する努力やポリシーについて尋ねた際に、「常に成長しようと意識して初めて現状維持できる」と語った小野さん。常に向上心を持って練習に臨まないと実力を維持することすら難しいということである。それを辛抱強く続けていると、調子が良いときに実力が上がっているという。「勝って兜の緒を締めよ」という言葉の通り、努力することをやめない彼だからこそ結果を残すことができたのだろう。

体育会弓術部は昨年度、全関東学生弓道選手権大会において団体3位、全国選抜大会では団体2位と、立派な結果を残してきた。そのような部であると練習に明け暮れて勉学が疎かにならないのかと疑問に思う。だが、弓術部は勉学優先で文武両道を目指している。このような部の姿勢も、小野さんの何事にも手を抜かないというポリシーを後押ししているようだ。

ところで、新入生が入学してから早1カ月が経ったが、小野さんは新入生に伝えたいことが一つあると言う。それは「周りに流されず、一つでもやりたいことがあるのであればそれをやるべき」ということだ。自分でやりたいことを考えた上で、資格を目指したり体育会に所属するにしても、自分がやりたいことを考えることが大切である。たとえ実力が追いついていなくても、努力が大切なのだと小野さんは語った。

個人優勝を果たした全関東学生弓道選手権の感想を「調子がとてもよく、(矢が的に)当たる気しかしなかった」と話す小野さんも、昨年度はシーズン後半で成績が落ち込んでしまった。しかしまただんだんと調子を戻してきているそうだ。今年度の目標を聞くと、「今年は1年間を通して活躍して、去年より良い成績を残す」と意気込んだ。また、「団体戦では仲間に助けられていたので、今年はもっと頑張りたい」とも語った。

力強く弓を構える小野さんの背中にはその意志が表れていた。      (森俊貴)