「お世話になった人により恩返しができる」。喜びを見せるのは、先月、地元愛知の球団である中日ドラゴンズに見事ドラフト1位指名された福谷浩司選手(理4)だ。実験等で時間の制約が多い理工学部に在籍しながらも、塾野球部で活躍。文武両道の道を貫いた大学生活4年間を振り返りながら、自身の心境とプロでの展望を語ってくれた。

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高校3年次に自身に対する評価を知るためプロ志望届を出すも、地元を離れ慶大の門を叩いた福谷選手。初年度の秋には試合に出場し始め、2年生になると秋のリーグ戦でベストナインに選ばれるなど着実に力を発揮。理工学部の課題や実験に追われ思うように練習に打ち込めないこともあったが、そのとき目の前にあるものを一生懸命に取り組んだことが両立につながった。

後悔をばねに結果残す

しかし最上級生となった今年は、「一番しんどかった」と振り返る1年となった。早春(3月4日)に内転筋肉離れを起こして約1カ月離脱を経験。自身の離脱は自分自身だけでなくチームにも悪い影響を与える、ということを学生のうちに学べた点では良かった、と前向きに評価する反面、最上級生としてチームを六大学リーグ優勝へ導くことができず、「優勝できなくて申し訳ない気持ちでいっぱい」と悔しさをにじませた。
こうした自身のけがや、六大学リーグ優勝を果たせなかったことから、シーズンが終わってからも後悔に近い気持ちが残った、と話す福谷選手。これから最上級生となる後輩たちに「卒業後どんな道に進むにしろ、絶対に後ろめたい気持ちで引退してほしくない」と強い想いを託した。現在の1、2年生には、「1年ずつの積み重ねが大事であり、毎年来年が勝負だという気持ちでやってほしい」とすでにメッセージを残したそうだ。
最上級生として最後の「仕事」を進める一方、自身も毎年、「来年が勝負だ」という気持ちを大切にしようと意気込む。「少しでも1軍に長く残り、そして結果を出すために頑張りたい」。名投手の多い中日ドラゴンズに入団する福谷選手。同チーム内でも出身地(愛知県知多市)が同じである浅尾拓也投手を目標とし、「背中を追い続けたい」と語る。
目前に迫った来年2月ごろ行われる春季キャンプについては、これまでの全体的な練習量不足やけがといった学生時代の反省を踏まえ、技術的なことよりもけがをしない丈夫な体作りを一番の目標に掲げた。同時に、144もの試合があるシーズンを通して結果を残すため、「気持ちの切り替え方をプロの先輩たちから学んできたい」とも話す。身体面・精神面共に向上させようという姿勢は、プロで活躍する福谷選手の姿を容易に想像させた。
部活と勉学との両立の難しさや、けがなどを乗り越えてきた大学生活4年間。周囲の環境や人々への感謝の意を胸に抱き、地元での更なる飛躍を誓った。

(森下怜一郎)