〔特別インタビュー〕岩下達郎選手~信頼を得られる選手を目指して~

電鉄杯、トーナメント戦、早慶戦、新人戦を終え、駆け巡るように2008年前半は過ぎていった。昨年は2部降格という痛手を負ったが、今期前半戦を振り返ってみると秋のリーグ戦、インカレに向けてはよいスタートをきれたのではないかと思う。特に早慶戦での白熱した戦いのあの興奮は今でも思い出される。1年次からセンターとして主力メンバーであり、早慶戦でも活躍していた岩下選手に話を伺った。岩下選手は春リーグを終えての思いと自身が目指す人物像について語ってくれた(インタビューは2008年7月30日に行われた)。

チームの成長、求められる安定感、上級生としての責任

「昨年に比べると成績を残せた」。春リーグを振り返っての感想はトーナメントでは3位、早慶戦は早稲田に勝利し、新人戦では5位という結果であった。特に、トーナメントの東海戦や早慶戦では気持ちを切らさずに競り勝てたことが大きな収穫だった。成績を残せた要因として、次のような点を挙げた。「チーム全体として良かった点は、酒井や二ノ宮、自分が経験を経て、2年生になれたこと。田上さんの大躍進、精神面でもプレイの面でもしっかりとチームを支えて、大事なところできめてくれること。そして、鈴木さんがキャプテン心をもって引っ張っていってくれること」。

しかし、昨年よりも成長した点がある反面、春シーズンを通しての課題もある。「気持ちの波が多きく、精神面の安定ができていないこと」。気を抜いた瞬間に相手にやられることが多かった。「精神的に安定していないので、もっと安定感をもってチームプレイをすることがリーグ戦の長い期間を通してやるべきこと」。この安定感のなさは昨年からの課題であった。「チーム力を発揮できるときはかなり強い力を持っているという自信があるので、集中力をきらさないように、最後まで気を抜かずに先攻逃げ切りで、チームで勝ちに向かっていくことが大事だと感じている」。チーム全体だけではなく、個人としてもフリースローにも見られる精神面の安定は大きな課題だそうだ。

また、下級生を迎えての初めてのシーズン。昨年との心境の変化について伺った。「2年生になり上級生としての意識をもって、原田という同じポジションの後輩にいかにして自分のプレイをみせるかという責任もある。試合中、自ら声を出すようにしている。また1年生とも積極的にコミュニケーションをとるようにしている」。

韓国戦、貴重な経験

インタビュー後に行われた韓国の延世大学との定期戦。この韓国戦は秋シーズンのリーグ戦やインカレに向けての大切な試合であった。定期戦への意気込みを伺っていた。「短い調整期間ではあるが、勝つことができるチームを作りたい。夏の練習は相当きついので、集中力と精神力を持続させるような基礎体力作りをし、ポイントを絞ったバスケを出来るように頭を使えるようになるのが目標。個人的にはフィールドゴールのパーセンテージが低かったので、改善できるように『ボールを入れたら点を取ってくれるような信頼』を得られるようになりたい」。

韓国戦といえば、5月に行われた李相伯杯に岩下選手は日本代表として選ばれた。その時の韓国の選手の印象についてこう語った。「韓国と日本の違いはフィジカル面で、韓国の選手は大型の選手が走れる。そして、日本人には負けないぞというハングリー精神が強いこと。こういった点が、韓国の強みだと思った。ディフェンス面は通用するという気持ちはあったが、オフェンス面で自分たちが決めきれなくて、点差を広げられることが多かった。気持ちの強さは韓国の方が上だが、頭を使えて、機能的なバスケをするというところは同じくらいと思っている」。

大学バスケのレベルの高さを実感

「大学のバスケは高校のバスケとは同じ面がないかなというぐらい全然違うと感じていまます」。特に、サイズとフィジカル面、ファウルのとり方にも違いがあり、レベルの高さを感じているそうだ。高校の時から試合はフル出場であったが、大学では一試合でも疲れ果てる。練習も全然違い、運動量の差が歴然としていて、練習と練習のメニューの切り替えも効率が重視されている。練習の一つ一つにしっかりと目的をもってやっているという。体力をつけるための練習や試合でのモチベーション維持は、負けたくないという思いと試合に勝ったときの喜びがつながっている。「新人戦でリバウンド王を獲ったことは、正直当たり前のことで、結果が5位だったことに満足していない」。こういったすぐに満足しない気持ちがモチベーションの維持に繋がっているのではないか。

信頼されるような人間になりたい

バスケでの到達点はちゃんと自分の仕事をこなせる選手、例えば竹内公輔選手のようになりたい。自分の取れる範囲ではなくても「(リバウンドを)とってやるぞ」という強い気持ちを持てるようになりたい。竹内選手はリバウンドセンスがすごい。竹内選手のようなセンスがなかったとしても、運動量でカバーできるので竹内選手に近づけるようにがんばりたい。その上でオリンピックに出てみたい。バスケでがんばれば、どこでもがんばれる人間になれると思っている。そして、小さい子供たちがこういう人になりたいと思えるような人、周りの人から信頼されるような人間になりたい。対人関係でうまく信頼関係を築けるようになれれば、人生を幸せに生きられるのではないかと思っている」。

最後に秋シーズンと来年に向けての意気込みを伺った。「1部復帰を目指して、勝つという気持ちでがんばりたい。そのためには、パワーをつけてフィールドゴールのパーセンテージをあげて信頼を得られるような選手になりたい」。

大きな目標をもち、ひたむきにバスケに取り組む姿に、バスケへの熱い思いを感じることができた。インタビュー後に行われた延世大学との定期戦でもチームの中心となり活躍していたが、秋のリーグ戦はもちろん彼の更なる活躍を期待している。

(2008年8月19日更新)

文 阪本梨紗子
写真 羽原隆森