猫は家族 譲渡会から学ぶ命の大切さ

譲渡会の猫の様子

日本は今、猫ブームに沸いている。一般社団法人ペットフード協会によると昨年、調査開始以来初めて猫の推定飼育数が犬を上回った。

飼われる猫もいれば、捨てられる猫もいる。捨て猫を救うべく月に2度、飼い主のいない猫の里親を募集する「猫の譲渡会」が東京都中央区の区立産業会館で行われている。主催しているのは、「地域猫活動」を行う個人ボランティアグループのねこざんまいだ。

猫が捨てられる理由はいくつかある。転勤や飼い主の猫アレルギーの発覚、繁殖を繰り返し、劣悪な飼育環境下で飼いきれないほどの頭数を抱えてしまう「多頭飼育崩壊」などがその例である。

不幸な猫は、捨てられた猫だけでは収まらない。捨て猫の多くが避妊、去勢手術を受けていない。猫は1回の出産で平均3~5頭の子猫を産む。1頭だった猫が1年後には50頭を超えるということもありうる。望まれない妊娠により、ますます拡大する。

ねこざんまいの人たちは、こうして捨てられた猫たちを保護している。

保護された猫は、栄養状態が悪い。回復には、多額の費用、時間、手間、気力を使う。また、人に飼われた経験のない猫を人に慣れさせることも重要だ。猫が譲渡会に出られる状態にするまでには、ねこざんまいの多くの苦労が積み重なっている。

一方で、保護されず命を落とす猫も少なくない。カラスやイタチなどの外敵に襲われる、屋外の過酷な寒さに耐えられない、というのが主な原因だ。「死ぬために生まれてきた命のように思う」とねこざんまいの河原直子さんは目を潤ませる。

譲渡会では1回につき、およそ半分の猫の里親が決まる。里親になるためには、自分の生活の中で猫を飼えるのか、見定める必要がある。1歳以上の猫は、家での留守番が可能で、性格が確立しているため飼いやすい。翻って、子猫は数時間で体調が変化することもあり、仕事などで長時間家を空ける人が飼うのは難しい。

生活リズムは一人一人異なるが、大切に飼うならば、最後まで責任を持つ必要がある。河原さんは猫を最後まで飼うための心構えについて、「猫をペットではなく、家族としての意識を持って飼ってほしい。命を軽視しないでほしい」と訴える。

河原さんの願いは、譲渡会を通して、捨て猫の保護主、里親、猫、全てが幸せになってもらうことだ。猫を「かわいい」「飼いたい」と思う人が、真剣に猫たちの大切な命について考えてはじめて、猫は幸せに生きられる。飼い主の意識が変われば、里親を必要とする猫がいなくなり、譲渡会を開催する必要がなくなる。この思いを胸に、ねこざんまいは今日も活動をし続けている。

(桐原龍哉)


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