模倣品海賊版拡散防止条約(ACTA)が先月6日、衆議院で可決され、日本の批准が決まった。著作権侵害を取り締まる国際的な法的枠組みを取り決める条約だが、刑罰対象の定義があいまいで、制定までの過程も公開されないなど、不透明な点が多い

▼そのため、EUを始めとする世界各国のネットユーザはネット上の自由が侵害されることを懸念し、反対運動を起こした。7月の欧州議会では、圧倒的多数の不支持で否決された

▼ところが日本では、国民のほとんどがその存在すら知らないまま、圧倒的多数の承認を得て可決された

▼ACTAに限らず、最近では国民の目に届かない政治的動きが目立つ。これらは政治家やマスコミの問題という考えもあるが、国民が政治から目を離してしまったことも一つの原因ではなかろうか

▼今の日本国民はマジックショーの観客のように映る。促されるままにマジシャンの右手に気を取られ、知らぬ間に左手でマジックのネタを仕込まれてしまう

▼我々はトリックに惑わされず、もっと政治を刮目しなくてはならない。情報化社会の現代に「知らなかった」などと言っていたら、EUの人々に笑われてしまうかもしれない。    (小林佑樹)