お笑いを通して社会問題を伝えたい――そんな強い思いを抱き活躍する塾生がいる。

たかまつななさん(総4)は学業に励みながら、お笑い芸人として活動している。今月1日には、慶大日吉キャンパスの来往舎にて「たかまつななの笑って学べるニュース~国際協力編~」を開催した。自身が以前実際にバングラデシュやカメルーンに足を運んだことで見えてきた、国際協力の現状や問題点、自分たちにできることなどを体験し、理解してもらうのがイベントの狙いだ。

イベント参加者と触れ合うたかまつさん (日吉キャンパスにて)
イベント参加者と触れ合うたかまつさん
(日吉キャンパスにて)
「国際協力を含め、社会問題を考える時、賛成派と反対派どちらの立場の考えにもメリット・デメリットがあることを理解してほしい」と語るたかまつさん。イベントでは講義形式のお話に加え、参加者を政治家、農家などの役割に分けディスカッションも行った。参加者にも体感してもらえるよう、練られたイベントだ。





たかまつさんがお笑いの道を志したきっかけは、中学2年生の時に憲法に関するある一冊の本を手に取ったことだった。

「本の中でユニークな提言をされていて、それが新しく見えたんです。すごい、どこの学者だ、と思って巻末を見たら爆笑問題というお笑いコンビの方だと書いてあって。お笑い芸人さんはこういうユニークな発想ができる、素晴らしい職業だな、と思いました」

高校時代にも芸人として活動していたたかまつさんは、慶大の面接試験ではネタを披露した。決めたのは試験一週間前。周囲の反対もあり、迷いはあった。しかし「私は大学に入りたい理由として『興味のない人に届けるために面白く、わかりやすく伝えたい』と書きました。それなのに(当初準備していた)面白くもないプレゼンをしていいのかなと」。試験官から「もっと自信を持っていい。面白かったです」と言ってもらえた当時の喜びは忘れられない。

「お笑いジャーナリスト」としてお笑い界の池上彰になる、という目標を持つたかまつさんは、教師の仕事もそれに似ていると考え教職の資格を取得済だ。また、ジャーナリズムについて学ぶため、今年4月に東京大学大学院情報学環教育部に入学した。今は慶大の学部と同時履修中だ。「お笑いはアウトプットする職業なので、そのためのインプットもすごく大事」。お笑いと学業の両立は簡単ではないが、両者を双方に生かせるよう心がけながら、活動の幅を広げている。お笑いの力で、社会問題とまだ興味を持っていない人とをつなぐために。彼女は今日も、笑いをとっている。       

(青木理佳)