5月10日、三田キャンパス西校舎ホールにて世界的なピアニストであるマルタ・アルゲリッチ氏のピアノコンサートが開催された。来場者は約850人にのぼり、大学に在籍する塾生のほか、幼稚舎や横浜初等部に所属する児童らの姿も見受けられた。

ピアノを演奏するアルゲリッチ氏(提供=慶應義塾広報室)

アルゲリッチ氏は、1941年アルゼンチン生まれのピアニスト。57年のブゾーニ国際ピアノ・コンクール、65年の第7回ショパン国際ピアノコンクールなど権威ある舞台で第1位を受賞し、「鍵盤の女王」「女流リヒテル」として不動の名声を獲得している。

コンサートは、同氏が総裁を務めるアルゲリッチ芸術振興財団と文字・活字文化推進機構役員の慶大OGによる申し出から実現したもの。アルゲリッチ氏と慶大の繋がりは、1970(昭和45)年の初来日まで遡る。日本人で初めて取材を実施した人物が音楽評論家の故・野村光一(文学科卒)だった。当時の縁もふまえ、3団体で「若者に一流の文化に触れる機会を提供する」目的が一致したことで開催に漕ぎつけた。

演奏された楽曲は、バッハの「イギリス組曲第3番ガヴォットⅠ-Ⅱ」ラヴェルの「水の戯れ」「マ・メール・ロワ」の3曲。ラヴェルの楽曲では、アルゲリッチ氏と親交のあるピアニスト・伊藤京子氏も演奏に参加した。演奏後は慶應義塾常任理事の池田幸弘氏、岩谷十郎氏からアルゲリッチ氏と伊藤氏に花束が贈呈され、ホールは長い拍手に包まれた。来場した塾生(文4)は、かねてよりアルゲリッチ氏の熱心なファンで「来るしかなかった」と語る。「ユニークな表現力が存分に発揮された素晴らしい演奏だった。特に『水の戯れ』は、水が躍動するような音色の流れに強く心を打たれた」

演奏後に笑顔を見せるアルゲリッチ氏と伊藤氏(提供=慶應義塾広報室)

慶大は、三田キャンパス旧図書館2階の慶應義塾史展示館やミュージアム・コモンズ、アート・センターなどで平時より塾生が芸術に触れる機会を提供している。広報室担当者は、「ぜひこれらの施設も認知して、積極的に利用してほしい」と呼びかけた。

(和田幸栞)