〜i-GIP KANTO Forum 2022・現場ルポ〜「私たちがいのちを守る」中高生60名がアイデア発表 前編

i-GIP KANTO Forum 2022 当日ルポ

10月30日午前7時半。静けさに包まれた東大駒場キャンパスの門を一人くぐった。この日、キャンパスにある21KOMCEEにて、i-GIP KANTO Forum 2022「心不全パンデミックを前に、未来社会の生に向き合う」が開催された。会場には、約60名の中高生とその関係者、そして団体に所属する大学生が集まった。

このフォーラムはヘルスケアの課題解決に取り組む学生団体inochi WAKAZO Projectが主催したものだ。当団体は「若者の力でいのちを守る社会を創る」を理念とし、2015年に関西で発足した。現在では全国に広まり、約150人の大学生が所属する。彼らの活動のひとつにinochi Gakusei Innovators’ Program(通称i-GIP)がある。これは、中高生、高専生が大学生とともにヘルスケアの課題解決に取り組むプロジェクトだ。i-GIPでは、毎年ヘルスケア領域からテーマを1つ設定している。中高生、高専生2〜4名に大学生1名がメンターとしてつく形でチームを組み、そのテーマに沿った課題解決に取り組む。i-GIPとしての活動期間は7月から約4ヶ月。今年度のテーマは「心不全パンデミック」。聞き馴染みのない方がほとんどではないだろうか。しかし、「心不全パンデミックを前に、君はどうする?」という問いに対して今年は20チームの中高生が答えを模索してきた。フォーラムはプロジェクトの最終発表の場である。優勝したチームには、11月20日に大阪で行われたinochi WAKAZO Forum 2022への登壇権が与えられる。
フォーラムは、和やかな雰囲気の中始まった。まず東大教養学部石井剛教授による基調講演が行われた。「心とこころ、あるいは人間になること」という題名の中国哲学についての話だ。中高生らは興味深そうに、真剣な眼差しを石井教授に向けていた。

次にフォーラムの要とも言える、中高生によるプレゼンテーションの発表に移った。与えられた時間は6分。どのチームも自分たちのアイデアを伝えるのに必死だ。試作品を実際にその場で使ってみせるチームや審査員に質問をするチーム。各チームの個性や想いが溢れる発表が続いた。
その後大学生によるパネルディスカッションを挟み、いよいよプレゼンテーションの結果発表だ。約4ヶ月間かけて懸命に進めてきた自分達のプロジェクトがどのように評価されるのか。はたまた、大阪で行われるフォーラムへ登壇できるのか。先ほどまで穏やかだった会場に緊張が走る。結果は、チーム「サモエドはもふもふ」が第1位に選ばれ、大阪への切符を手にした。嬉しさと驚きのあまり、手を口に当てるメンバーもいた。当チームは、ヒートショックによる急性心不全で亡くなる人を減らすため、入浴中のヒートショックのリスクを可視化するアイデアを考案した。他チームからは温かな拍手が湧き、全員が悔いなくやりきったと言わんばかりの清々しい顔をしていた。

フォーラムが終わり、4ヶ月間伴走してきた大学生のもとに中高生が駆け寄り、これまでの日々を一緒に振り返る様子も見受けられた。
中高生から生まれる発想力豊かなアイデアと、若さ漲る情熱に度肝を抜かれる1日であった。私たち学生でもいのちを守れるのだという希望を抱き、会場を後にした。

i-GIP KANTO Forum 2022に参加した中高生

優勝チームインタビュー

i-GIP KANTO Forum 2022終了後、優勝した「サモエドはもふもふ」の3人(昭和女子大学附属昭和高等学校)に話を聞いた。

──まず、率直に1位をもらった感想を聞かせてください。

-1位を目指して本当に頑張っていたんです。大阪に行きたくて、毎日ミーティングを夜遅くまでやって、その結果として1位になれて本当に嬉しいです。

-課題や解決策が具体的に固まっていくうちにどんどん団結力が生まれてきて、3人で作り上げているという感覚がありました。1位を取れて驚いたし、嬉しかったです。何より達成感がありました。

-私たち3人だけでは今日優勝することはできなかったので、学校の先生やメンターさんにも感謝したいです。

──4ヶ月間やってきた中で難しかったことや学んだことなどを教えてください。

-1人でやるよりも、3人全員の意見や大学生のメンターさんの意見など、いろいろな人の意見を聞くことで、視野が広がりました。また、行動することがいかに大切か分かったので、今回つけた力を今後生かしていきたいです。

-課題や解決策を練るにあたって、例えば解決策だったら「本当にみんな使ってくれるのか」「どう修正したら逆に使ってくれるのか」という観点について、自分だけの意見ではなく、実際に足運んで聞いてみることが大事だと分かりました。そして、それらについていろいろ考えていくことが大変だと思いました。

-巣鴨で何回もインタビューをしたのですがすごく大変でした。お婆さんを探すのも大変でしたし、そして声を掛けるのも勇気がいることで一苦労でした。

──ヒートショックに着目した理由と、自分たちの解決策によってどのような人を救いたいか、あるいは、どのような未来が生まれたらいいなと感じていますか。

-ヒートショックに着目した理由は、自分たちの身の周りで誰にでも起こりうる事故であるのに、お風呂に危険が潜んでいることを知らない人がいるからです。ヒートショックという言葉は知っているけれど意味は知らないという人が多いことが、インタビューを通して分かり、それを課題にすることで多くの人を救えるのではないかと思いました。ヒートショックが引き金となって心不全になる人には、心不全を元々患っている人が悪化してしまう場合と健康な人がヒートショックによって心不全になる場合があります。誰にでも当てはまることだからこそ、自分にも起こりうるかもという意識を持ってお風呂に入ってほしいです。適正温度があることを知らずにお風呂に長く入り、結果的に搬送されてしまう人を防ぐことができたらいいなと思います。お医者さんや看護師さんでなくても、本気になれば誰でも救えるんだなと実感しました。

 

「サモエドはもふもふ」による発表の様子

 

優勝した「サモエドはもふもふ」の3人

(後藤ひなた)

後編はこちら

【お詫びと訂正】
2022年12月12日(月)発行の3面に掲載いたしました「i-GIP KANTO Forum 2022・現場ルポ」にて、掲載内容に一部誤りがございました。

・訂正箇所:2段11行目
誤)中高生、高専生24名に大学生1名がメンターとしてつく形でチームを組み、そのテーマに沿った課題解決に取り組む。
正) 中高生、高専生2~4名に大学生1名がメンターとしてつく形でチームを組み、そのテーマに沿った課題解決に取り組む。

訂正させていただくとともに、深くお詫び申し上げます。