本年度、3月31日で定年退職を迎える経済学部の西尾修教授にインタビューを行った。大学での担当科目は、フランス語、自由研究セミナー、文学、日本語(国際センター)である。

 西尾氏は東京都出身。埼玉大学文理学部仏文科を卒業後、慶應義塾大学文学研究科修士課程修了、同博士課程在学中に、仏政府給費学生としてフランスに留学、エクス・マルセイユ大学でバルザックについての論文で博士号を取得し、慶應義塾の教員となる。さらに塾派遣でパリ第3大学に留学し、言語教授法資格を取得した。専攻領域は19世紀のフランス文学・思想で、バルザックの『人間喜劇』についての研究が中心。西尾氏はその他に、経済学部日吉主任、外国語学校校長、慶應義塾生活共同組合理事長などを歴任した。

 西尾教授は若い頃、将来的に大学で教鞭を取ろうなどとは、夢にも思っていなかったという。中学を卒業したのが昭和33年春、その年の秋には東京タワーが完成した頃で、お金を稼ぐために町工場に勤めながら上野高校定時制課程に通った。子供の頃から小説とか歴史とか、そういうのが好きだったせいで大学ではフランス文学を専攻。その後も独立職人として働きながら大学院に進学した。フランス留学を転機として勉学に専念、1976年に博士号。78年の春、本塾に就職した。

 そんな西尾教授に、大学教授として教鞭を取ることについて尋ねてみた。「若い人が尊敬の念をもって、話を聞いてくれることは素直に嬉しく、大きなエネルギーとなる。また学生たちが読んでいる本や、物の考え方の傾向などが授業を通じてわかるのはとても興味深い」。慶應生の印象については、「一口に言うと、なかなか優秀。ある程度の動機づけを与えると、色々なことができることはすごいことだ。ただ学生の側から、どんなことでもよいからもっと積極的に質問してきて欲しい。質問から様々なことが開けてくるはず。そこが対面教育の良いところでしょう」と語った。

 今回の取材での語り方からも、学生との対面教育を重視し、自身も楽しむという西尾教授の姿勢を感じ取れた。退職後も研究を続け、大学とは様々な形で関わっていくそうだ。西尾教授のさらなる研究の発展に期待したい。

(名倉亥佐央)