慶大生にとっての学生街といえば、「日吉」、「三田」、「湘南台」、「信濃町」が挙げられる。だが、東京にはその他にも種々雑多な学生街が随所に存在している。時代や、地域ごとで全く違った特色や雰囲気を持つ学生街と大学。以下に今回実際に足を運び、良くも悪くも慶應との違いを肌で感じた街と大学を、微細ながら紹介していきたい。
              
独自色出る5つの街

▼御茶ノ水
 M大学やN大学、医大、専門学校、有名予備校など数多くの学校が林立している御茶ノ水。ここは国内でも最大の学生街として知られている。
街には病院、書店、楽器店、飲食店、スポーツ用品店が多数存在している。そのため若い学生だけでなく、様々な年代の人々が闊歩する姿が見受けられ、終日活気に満ちている。しかし、メインストリートを一本外れると、閑静な住宅街やビジネス街としての顔を見せ、落ち着いた雰囲気も併せ持っていることが分かる。
 また、徒歩圏内にある神保町は世界最大級の書店街として有名で、読書好きの学生にとってはありがたい場所である。

▼高田馬場
 何といってもW大学のイメージが強い高田馬場ではあるが、その他にも多くの学校がここに拠点を構えている。駅周辺は飲食店が数多くあり、中でも居酒屋やラーメン店は激戦区として知られている。週末ともなれば、酩酊している人も度々見かけられる。
 駅からW大方面へと歩を進めてみると、授業終わりらしきW大生と何度もすれ違った。よく比較される両者だが、見た目から受ける印象は慶大生とさして変わらない。また、道中には目を見張るほどの数の古書店が立ち並んでおり、立ち寄っている学生も多かった。
 全体的にどこか温かく、親しみやすい街という印象を受けた高田馬場であるが、W大までは徒歩で行くとなると意外と遠いので注意が必要だ。

▼吉祥寺
 吉祥寺は「S大学やT女子大の学生街」というより、「おしゃれな街」として有名である。雑誌などでは「サブカルチャーの発信地」と言われ、ジャンルを問わず多くの店が立ち並び、訪れる度に新しい発見が出来ることがこの街の大きな魅力だ。とりわけ占いの店が乱立しているので、この街は「占いのメッカ」とも呼ばれている。ストレス社会と呼ばれる現代、「ココロのスキマ」を埋めてもらい、癒してもらうのも悪くない。
 この街のもう一つの魅力は公園だ。井の頭公園は、平日休日問わず多くの人が訪れる憩いの場。日々の生活に疲れたとき、ちょっと寄ってみて深呼吸してみてはいかがだろうか。

▼国立
 国立といえば南口にある大学通りの桜並木、銀杏並木が有名である。四季折々でまったく違った顔を見せてくれる通りで、新東京百景にも選ばれており、とても美しい。
 この大学通り沿いにキャンパスを構えているのがH大学だ。学生数が少ないためか、街には中高年の人々の姿の方が多く見られた。また、街全体としては活気に満ちているというよりは、静かで落ち着いた空気が漂っており、その中に大学が溶け込んでいるようであった。まさに、街と大学が一体化していると言える。
 余談ではあるが、慶大とH大は図書館協定を結んでいるので、受付で許可を取る必要はあるものの慶應の学生証を持参していれば、図書館内に入ることができる。

▼本郷
 温かな下町情緒を残す街本郷。ここにはかつて樋口一葉、石川啄木などといった文化人が住んでいて、学生の街としてだけでなく、文学の街としても知られている。そんな本郷に位置しているのがT大学である。
 この街には古書店や昭和の匂いが色濃く残る飲食店や建物が軒を連ねていて、訪れた人を自然と懐かしい気持ちに浸らせてくれる。そして、街の象徴の一つともいえる赤門はそんな街の雰囲気と見事に調和しており、多大な存在感を示している。
 また、街中だけでなく、T大の構内にも味のある建物や風景が数多く残されているので、散歩をしている人もちらほらと見かけられる。大学が街の一部となっているといっても過言ではないだろう。

 今回は以上の街と大学を実際に見て回った。その中で感じたことは、大学と学生と街は相互にリンクしているということだ。○○大生はこうあるべきだといったイメージ、あるいは各大学の校風によって、その大学のカラーを持った学生が街の雰囲気を作りあげている。つまり、大学が学生をその大学の色に染め、その学生が街の特徴を出しているということである。

 「学生が変わって街も変わってきている」。こう話すのは日吉に長年住み続けているAさんだ。大学と学生と街は輪のように繋がっている。どれか一つだけが変わっていくということはない。

(大熊一慶)