最近結婚しても働き続けたいと思う女性は少なくない。ある調査によれば、結婚後も正社員として働き続けている女性は5割以上いるという。女性のあり方が変動している、そう私は感じている。
だが30年前はどうだったのだろうか?そのまた昔は?結婚しても正社員のまま働き続けるという選択肢はかなりの少数派だったはずだ。どのような要因で、またいかにして女性のあり方が変わっていったのか。その答えを教えてくれたのがこの『モダンガール論』である。
本書はさまざまな時代の文献、雑誌記事を引用しながら女性の社会的立場、考え方、活動の変遷をたどっていく。明治の女学生、女工や大正時代のカフェーの女中、太平洋戦争期の軍国婦人、現代のOLなどたくさんの女性像が説明されている。また、婦人雑誌が各時代の女性に影響を及ぼしていたとする著者の見方は興味深い。
著者は時に毒をもって批判をし、また時に明るくフランクな語り口で読者を納得させる。  著者は論ずるにあたってのスタンスとして欲望史観をとると宣言している。婦人解放運動の力を賞賛する進歩史観とも、性差別を強調しようとする抑圧史観とも違うこの欲望史観は、女性のいろいろな欲望を正直にとらえようとするものであり、同時にどの方向へも偏らない中立的な立場だ。
そして、冒頭で女の子には2つの出世の道があると説いている。颯爽としたキャリアウーマンとなって会社で出世コースを歩むか、専業主婦となって家庭内で幸福を追求するか。近代以降の女性はこの2つの道のどちらを選択するかで揺れ動いてきたと著者は語る。
ところで本書の出版は2000年、つまり20世紀末のことなので2012年における欲望史観から見た女性像は本書から窺い知る事は出来ない。だが出版から3年後に文庫化するにあたって寄せた補足で、著者はこれから女性がとるであろう新たな第三の選択肢を示している。それは「出世の道を降りて普通に暮らす」というものだ。夫婦がお互いに働き、同時に家事も補い合う。一見すると、夢の無い選択肢に見えるがこうすることで時間が生まれるので、趣味や社会貢献をすることができる。そこに充実を生み出す事が出来るだろう、と。おそらく著者のこの見立ては正しい。なぜなら、現在共働きを望む女性は多く存在している上に、SNS等で趣味の仲間を集めたり社会貢献をしたりする人は増えている。そしてこの選択肢は、最初に私が抱いた疑問に対する一つの答えであるといえるだろう。
私は女性に限らず、男性にも読んでいただきたいと思っている。男性は昔からほとんどの人が就職し会社で出世するという選択をとってきた。つまり、女性とは異なり選択肢は一つしか持っていなかった。しかし、男性にも「出世の道を降りる」という第二の選択肢が現れたと私は考える。このように、自分の生き方を見つめ直すという点で本書は最適だ。
この日本という国で働いている、または働き始める全ての人に読んでいただきたい一冊である。
(二ノ宮暢)