今年も空が暗くなりがちな梅雨の季節がやってきた。天気が悪いと体調も悪くなると感じることはないだろうか。それは気のせいではなく、天気の変化と心身の健康問題にはつながりがあることが分かっている。慶大医学部神経内科の舟久保恵美特任助教にお話を伺った。

「天気と気分の関係は、いろんな報告があるわりに、そのしくみは医学的に検証されていませんでした」。ヒトを対象とした実験では、思い込みなどの心理的要素が除外しきれない。そこで動物実験を行ったところ、気温や気圧変化が自律神経に影響を及ぼすことが明らかになってきた。気温・気圧が下がると交感神経が興奮し、心拍数や血圧が上昇することが実証されたのだ。また、気圧変化の検出には耳の奥の内耳が関与する可能性があるそうだ。

春先は気温・気圧・日照量が変化しやすい。体がついていけずストレスがたまっている。そのまま梅雨に入ってどんよりした気候が続くと自律神経が調節できず、うつなどの気分障害の発生頻度が高まる。気圧低下が続くと、うつ状態が助長されることが動物実験でも明らかになった。さらに交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、血圧の調節がうまくいかなくなったり、疲れやすく、めまいがしたり、気持ち悪くなりやすい。

この症状を予防するには自律神経のバランスを保つことが重要だ。例えば、平日と休日の生活リズムに差があるとバランスが崩れてしまう。平日にストレスがあると交感神経が強く働いて血管が収縮している。休日にストレスから解放されて副交感神経が強く働くと、血管が拡がって脳の血管周囲の神経を刺激する。そのため偏頭痛は週末に悪化することも知られている。対策は薬に頼る以外に、週末も夜更かしや寝だめはせず、規則正しい生活を送ることだ。「睡眠不足の場合は、昼食後などに30分以内の昼寝を取るといい」とのこと。

この季節に感じる疲れや頭痛は自律神経のバランスが崩れているサインであり、日頃のストレスが大きいことを知らせる信号だ。他の要因としては湿度が上がると汗をかきにくくなることが挙げられる。体に熱がこもり、うまく体温調節ができなくなって熱中症にかかりやすくなる。 運動を取り入れたり、辛い物を食べたりするだけでも、だるさをすっきりさせることができるそうだ。 夏休みはすぐそこ。梅雨も明るく健康に乗り切ろう。       (佐藤万貴)

気分がふさぎがちになる雨の季節