慶應義塾消費収支予算(単位:千円)


平成24年度義塾収支予算が発表された。今年度は帰属収支差額(帰属収入―消費支出)で約34億円の収入超過を見込んだ。収入超過予算は、大幅の支出超過(約17億5000万円)となった平成22年度から大きく好転した昨年度に続き2年連続となる。今年度の懸念の一つは、東京電力が電気料金値上げを申請していること。電力料金が上昇すれば、帰属収支差額に影響する恐れがある。   (片岡航一)

 

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財政の健全化にあたっては、平成22年度の予算編成時から掲げてきた「4年後に帰属収支差額で投資的な支出の半分程度を賄えるまでに収支のバランスを調整する」という目標を継続することで、当面は帰属収支差額で約50億円の確保を目指す。
そして学費や補助金に頼るような収支の状況改善をはかるのではなく、経費節減を徹底し、新規事業には既存の予算から費用を捻出(ねんしゅつ)することも併せて予算編成の方針として挙げている。
節減の具体策として、たとえば事業の見直しが行われる。また予定していた事業を行う際には、厳正な見積もりやパフォーマンスを下げずに最小のコストで業者に発注するなどといった対策をとるとしている。
同予算において、創立150年記念事業に関連する工事予算として約80億円が充てられた。平成25年度に開校が予定される横浜初等部の建設工事費に約43億円のほか、矢上キャンパスの33・34棟の建替工事費をはじめ、信濃町キャンパス3号館(南棟)に設置される予防医療センターの備品にかかる費用が内訳の大きな割合を占めている。
また、大学病院等への耐震補強に約11億円かけることが予算に盛り込まれている。
これらは今年度重きをおく具体的な事業計画として、予算の確保を優先したという。
財政基盤を固める際、積極的に補助金や外部資金の獲得に努めている。平成23年度、日本私立学校振興・共済事業団から受けた私立大等経常費補助金は約99億円にのぼる。慶應義塾は日大、早大に次いで3番目に多い額を交付されていることになる。また、昨年度から文部科学省が実施する博士課程教育リーディングプログラムの補助金を獲得するなど、外部資金を順調に確保できているという。
今年度懸念される点は、東京電力が電気料金の値上げを申請したこと。東京電力の値上げ申請は予算編成後に発表されたため、予算編成には電気料金値上げ分は盛り込まれていない。電気料金が値上げした場合、予算に組まれた支出額が多くなる恐れがある。慶應義塾は節電対策などを講じていくとしている。

【用語解説】
帰属収入は、学生生徒等納付金(学費)、手数料(入学検定料)、医療収入、寄付金、補助金などの収入であり、借入金収入などの負債となる収入は除かれる。消費支出は、人件費、教育研究経費、病院経費など、当該年度に消費する支出。帰属収支差額は帰属収入から消費支出を引いた額である。帰属収支差額のプラスは、自己資金として、将来的な施設投資や借入金の返済の財源を確保していることを示す。