慶大病院の呼吸器外科で、教授ら2人が肺がんの患者など31人の手術中に、患者の同意を得ないで骨髄液を採取していたことが、3月19日同病院の発表で分かった。
これは、患者同意を求めた厚生労働省の「臨床研究の倫理指針」に抵触する行為。慶大は2人について懲戒処分を検討している。
慶大はすでに担当医師を通じて、患者に説明や謝罪をしており、健康被害は報告されていないという。
「骨髄液の採取は肺がんの効果的な治療法を探る臨床研究のため」と慶大は記者会見で説明。昨年10月24日から1月11日までの2カ月半の間、肺がんの手術中に患者26人(40―84歳)のろっ骨から無断で骨髄液を採取していた。
さらに、肺がん患者と比べるため、肺がんでない患者5人からも骨髄液を採取していた。
教授は無断採取について「患者の治療のためにしたが、所定の手続きを飛ばしてしまった」「できるだけ早く成果を得たかった」と説明しているという。
慶大は呼吸器外科の申請を受け承認した他の臨床研究の全てを停止し、同様の事例がなかったか調査中だ。
これを受け厚労省は3月30日、慶大に予定していた新薬開発の補助金5億円の交付延期を発表。来月30日までに再発防止策等を報告しなければ、補助金を打ち切る可能性も示唆した。