レーザーによる手術(青山アイクリニック提供)
レーザーによる手術(青山アイクリニック提供)

目が悪いということは実に不便である。受験勉強のせいで視力が落ちてしまった人も少なくないことだろう。そこで今回、視力回復について慶大医学部眼科学教室の坪田一男教授にお話を伺った。

まず日本人は、近くにピントが合って、遠くに合わなくなる近視になりやすい目の形状をしているのだという。近視の次に乱視、そして遠視の割合が多くなっているが、これらは目の疾病というわけでないそうだ。

「一つの仮説として、近くばかりを見る生活に目が適応してきて、近視の人が増えたのかもしれない」と坪田教授は言う。狩猟民族だったころは獲物や敵をいち早く見つけるために遠くを見る能力が重視されたが、現代では近距離にある情報が重要で、勉強やデスクワークのできる人の方が有利な文明になったからだ。

とはいえ、現代においても遠くが見えないと困ることも多い。

視力矯正の方法として第一に挙げられてきたのは眼鏡だ。太古の時代には目の悪い者は生き残ることができなかったであろう。500年ほど前にポルトガルから眼鏡が伝来してきたことで、近視の人も一般の生活ができるようになった。その後、今から60年前のコンタクトレンズの出現によって、乱視のある人、近視の強い人も視力が得られるようになった。

そして20年前に、レーザーで角膜の屈折力を変える手術を施すLaser in  Situ Kerato

mileusis(以下レーシック)という方法が誕生したことで、近視や乱視はハンデではなくなった。レーシックの手術で使われるレーザーは眼球自動追尾装置がついているため照射がずれる心配はない。専門医が行えば安全に視力が回復できる眼科医療として確立された治療である。今まで視力の低い者は就くことができなかったパイロットや宇宙飛行士、空陸海軍といった仕事へも、アメリカではレーシックをすれば応募できるようになっている。「日本もこれから受け入れるようになるだろう」と坪田教授。坪田教授はすでに数万件ものレーシック手術を行う、日本で指導的立場の第一人者だ。自分の子供たちにも手術を施したという。

近視人口の多い日本では今後、レーシックの普及が予測される。とくに震災以降、強度近視の人で手術を希望する人が増えているという。

レーシックを受ける際には、信頼のおける施設とドクターを選ぶことが大切である。安心レーシックネットワークのホームページで、10のチェックテストなどを参照しよう。

坪田教授が手術顧問を務める南青山アイクリニックでは学生割引や、家族割引のシステムがあるので利用するといい。執刀医の指名も可能とのこと。

眼科学のうち、病気ではないが見えない人を対象とする眼光学は日本では今はあまり盛んではない。そうした状況の中で慶大は、現在レーシックの研究を行っている、全国で5つほどしかない大学の一つなのそうだ。

目の健康は体全体と絡んでいるため、目だけが良くなるということはない。体に良いことは目にも良いのだ。食べ過ぎず、ヘルシーな食事をすること。適度に運動をすること。そしてご機嫌に生きること。「これらを実践して幸せに過ごすことは、目に良いだけでなく、人生の全てがうまくいくことにつながるだろう」と教授は笑顔で語った。               (佐藤万貴)