先月、東京大学が5年後には秋入学への全面移行を実現させたいという意向を発表した。その影響で、他大学でも本格的に秋入学を検討し始める動きがある。なお慶大では既に、総合政策学部、環境情報学部、法学部の3学部に9月入学の制度が設けられている。そこで今回は、実際に9月入学の制度を利用したSFCの帰国生と留学生に、秋入学に関してのインタビューを行った。

取材に協力して頂いたのは、高校時代をスイスで過ごした山田祐樹さん(総2)、いくつもの国に住んだ経験がありアメリカンスクールを卒業した山下明里さん(環2)、台湾からの留学生ジョイさん(環1)の3名。

「7月に海外の高校を卒業してから4月に日本の大学に入学すると、待つ期間が長く、時間を有効に使えなさそう」と山下さんは秋入学が無い場合の不便さを述べた。山田さんはもともと4月入学のつもりだったが、スイスの予備校の先生から、9月入学を勧められ決意したそうだ。「6月に卒業してすぐに帰国、その2週間後に選考のための書類を提出しました」

秋入学の大きな魅力は、このように海外の高校を卒業してから日本の大学に入るまでのギャップタームが省かれる点だ。秋入学導入に対してジョイさんは「日本にくる留学生も増え、海外との繋がりが多くなる」と期待し、「逆に日本から海外に出て仕事に就くにも秋入学のほうが良い」とも話した。

また山田さんは秋入学の機会に同じ境遇の人と多く出会うことができ、人間関係の面でもメリットがあると自身の経験を語った。

秋入学のデメリットについて3名全員が指摘したのは、9月に卒業する場合、日本での就職や院進学の準備を始める時期もずれるという点だ。「採用面接を年に2回行う場合は企業側が大変そう」と山下さん。

また、山田さんは「4月入学者と9月入学者のためにそれぞれ春と秋とに全く同じ必修科目を教えるのは教授にとって大きな負担」と実際に教授から聞いたそうだ。また「9月にも新歓を行い温かく迎える態勢を整えたりするなどの環境作りが不十分」とも語った。このように4月と9月両方の入学制度がある現状にも問題があるようだ。

しかし3名とも総じて全面移行にも慎重な様子だ。「日本の大学は国際的に遅れているから、グローバルスタンダードに合わせるならば秋入学は適切。だがいきなり変えることは困難。徐々に段階を踏むべき」と山田さんは考える。ギャップタームにはボランティア活動や留学など、国内外で課外的な経験ができるようカリキュラムをしっかり設けるべきであると意見が3名で一致した。

また「入学時期をずらすだけでは不十分。日本の大学が英語での対応を万全にするなど留学生が不自由をしないような準備も必要」山田さんは語った。

大学生活にも本格的にグローバル化の波が到来する日も遠くないかもしれない。今後の動向に注目していこう。

(川井田慧美)