12月1日から、就職活動が本格化した。骨身に染みる寒さの中、キャンパスは昨年より2カ月遅れてスーツ色に染まった▼「ゆとり世代」で知られる私たちは同時に「主役世代」でもある。幼稚園のお遊戯会では主役が10人の『桃太郎』。少年時代のゴールデンタイムにはジャイアンツの「4番打線」が活躍し、高校ではクラスの脇役を「陰キャラ」と嘲笑した▼有名なもの、目立つものばかりに目が行ってしまい、就活でも商社やマスコミといった花形企業の人気は高い。大金を動かす企業や誰もが知る製品を作る会社が社会の「主役」として語られる▼就活の面接の際にもサークルやゼミの「代表」が乱立するという。誰もが「主役」の経験を語り、社会に出ても「主役」になりたいと願う▼だが、皆が桃太郎、皆が4番ではチームは機能しない。自分が会社というチームの中で、どのように貢献できるのか、また、その会社は社会でどんな役割を担っているのかを見つめるべきだ▼立ちはだかる就活を前に、引き出しから『桃太郎』の台本を取り出してみた。自分が演じなかった犬、猿、キジが大活躍している。そこには主役に負けない存在感があった。    (井上史隆)