情報を取捨選択する必要性を指摘する坪田非常勤講師
情報を取捨選択する必要性を指摘する坪田非常勤講師
3月11日に発生した大地震や、9月21日に到来した台風15号は、自然の威力の恐ろしさを感じさせた。こうした自然災害が発生する中で、私たちはどう行動していくべきだろうか。日吉キャンパスでインターネット気象学や地学の教鞭を執る、坪田幸政非常勤講師にお話を伺った。
まず、現在の気象の危機的状況をどう捉えているか伺うと、「今回の大地震や台風はそれほど異常、危機的な出来事ではない。人々は、天気は毎年同じように安定すると認識しがちだが、気象は毎年変化するものだという意識を持ってほしい」と、今回の自然災害は自然変動の範囲であると話す。「気象は日々変化するものであり、今回のような出来事はまたいつ起こっても不思議ではないことを心にとめておくべき」とアドバイスを送る。
現在、新聞やテレビよりも利用者が多いといわれるWEB天気予報。速報性に優れているという点で、我々の行動決定に一役買っている。「WEB天気予報はポジティブに使うべき。数時間先の予報はかなり当たるので、特に緊急時には活用して行動につなげてほしい」と、いつどこでも手に入るという利便性を備えたWEB気象情報の活用を促す坪田講師。 しかし一方で「インターネットが始まったころに比べると、現在は情報の質が低いものも氾濫しているが、どんな情報も同等に扱われてしまっている。インターネットを使う人がリテラシーを高め、情報を見極めながら使用しないと正しい情報を受け取ることができない」と、ネット情報自体の問題点も指摘した。
そして、まず自然環境に関心を持ってもらいたいとした上で、「環境について議論している専門家などは、今だけでなく私たちの未来の世代をも視野に入れて議論している、という考えが定着するとよい」とも語る坪田講師。環境が変化し手遅れになる前の、「転ばぬ先の杖」の議論ということを理解してほしいと話す。
また現状の課題として現在の対策は健常者に影響が少ないよう考慮されているが、弱者への配慮が欠けていることを挙げる。「節電によるエレベーターの稼働停止など、バリアフリーの制限が弱者に多大な影響を及ぼしたことを見落としてはいけない」と、対策における弱者への配慮不足を強調した。
さらに原発などの例を挙げて、「政府が何事にも正確な情報をきちんと開示した上で、国民がそれに応じるかどうかしっかりと見極めなければならない。我々自身が的確に行動を判断できるよう、学習することも重要だ」と、判断の必要性を熱く訴えた。
私たちは自然からの攻撃を受けた時のみに環境問題を真摯に考え、時間が経つと忘れてしまう。大きな気象変動に触れてから再び環境の危機的状況を思い出す、という繰り返しを断絶し、普段から少しでも環境問題を意識することが重要である。
(下池莉絵)