2011年度の新卒求人倍率は1・23倍(リクルートワークス調べ)と、かつての就職氷河期に近い水準にまで落ち込んだ。日本人の就労もままならない状況にあって、相対すべき相手は今や国内人材のみにとどまらない。

背景として、人材業の海外マーケット進出の影響が大きい。新興国の台頭著しい昨今でも日本の労働環境は魅力的だ。地理的に近いこともあり、中国ではトップクラスの大学生が日本企業を目指すことも珍しくない。企業側のニーズとしても国内人材の採用に限界を感じる企業が多いなか、海外人材への期待は大きい。

一方で、当の海外人材にとって日本の特殊な環境に慣れることは決して容易なことではない。一番の悩みと言えば、やはり言語の違いだろう。

「アジア人財資金構想プロジェクトが約150社を対象に実施した『日本企業における高度外国人材の採用・活用』に関する調査によると、過半数の企業が留学生に高度な日本語力を求めています」と話すのは、BJTビジネス日本語能力テスト(以下BJT)事務局の神野裕史氏。「正確なビジネス日本語で文書を作成するには職場の支援が必要だが、聞いて話す分には支障ない水準」の日本語能力を求められているという。海外人材に対するニーズが高まっているとは言え、多くの日本企業では「カタコト」の日本語力で採用に至ることは難しい。

日本語能力の証明のため、多くの留学生が日本語に関する資格試験を受験する。その中でもBJTはビジネス日本語コミュニケーション能力を測るもの。ビジネス日本語に特化していることが特徴だ。語学力のみならず実際のビジネスシーンの理解度がテスト結果に反映される点や、スコア制を採用しているあたり、英語能力を測るテストとして代表的なTOEICとやや趣向が似ている印象だ。

受験者数については「日本と中国で半々くらい。日本の外国人求職者の割合としても中国人が多いことから中国人受験者が多くなっています」。中国でも大学生は6割程度しか就職できず、「日本語ができると就職先を見つけやすい」ことから、英語の次に日本語の学習者が多いのだという。

入国管理局が毎年実施している調査では、日本で就職活動に成功し、2009年に就労ビザを取得した外国人留学生の数は9584人。これは5年前の5264人に比べて実に1・8倍の数値だという。

今後もこの数値が急激に伸びていく可能性は十分に考えられるが、現状、日本企業はまだまだ海外人材の採用に慎重な印象を受ける。BJTのような資格試験は客観的な評価指標として、海外人材を採用したい日本企業への「ひとおし」になりそうだ。

(岡本直人)