メディア・コミュニケーション研究所が主催する公開講座「テレビドラマの向こう側」が先月18日、三田キャンパス北館ホールで行なわれた。講師として迎えられたのは、テレビ演出家であり映画監督としても活躍する生野慈朗氏。生野氏は経済学部を卒業後、1972年TBSに入社。以後30年以上にわたり「3年B組金八先生」シリーズや「Beautiful Life」、「オレンジデイズ」など話題作の演出を数多く手掛けてきた。
 今回の公開講座は企画の立案から構想の展開、キャスティングの設定といったテレビドラマの制作過程を、来場者との対話を通して共に構成していくという形式が取られた。出演者とのエピソードや制作秘話も交えながらの講演は、普段知ることのできないテレビドラマ制作の裏側をのぞかせた。 
 生野氏が講座の中で終始主張したのは「人と人との繋がり」だ。「演出家を含め、ドラマの制作者が作っているのは『人の心を動かすもの』であり、そのためには、人との出会いが重要です」と説明。実際に思わぬ縁から発展し、実現に至ったドラマも多いという。
 演出の他にもタイトルバックや主題歌、作品の題名にもさまざまな思いを込めると語る生野氏。題名を考えることはドラマの本質的意味を熟考する場でもあるという。会場では、2000年放送の「Beautiful Life」の映像を上映し、タイトルバックに登場するひとつひとつの素材に馳せた意図を解説した。
 テレビドラマの立ち上げには、演出家やプロデューサーの立案に端を発する企画先行、出演者から内容を構成していくキャスト先行、話題の漫画を題材に制作するコミック先行があると説明。最近では後者2つも増えてはいるものの、クリエイティブ性を追求する生野氏はあくまで企画先行を主体的に行いたいと主張し、一から作り上げていくことの重要性を語った。