日本漢字能力検定協会が毎年全国公募する「今年の漢字」
日本漢字能力検定協会が毎年全国公募する「今年の漢字」

 昨年度の志願者が232万人を超え、国内最大級の検定と言われる日本漢字能力検定。大学時代に押さえておきたい漢字の水準とはどのくらいなのだろうか。
 「新聞を読みこなし、正確な文書を書ける水準として『漢検2級』つまり1945字の常用漢字(※)をきちんと活用できるレベルの取得を奨励しています。1級や準1級は教養といった趣が強く、生涯学習の一環として比較的年配の方が受検する例が多いですね」
 そう語るのは、日本漢字能力検定協会、東日本普及課の茅根英之氏。
 そのため就職活動などにおいても、企業として学生に求める水準はおおむね「漢検2級」とみて間違いないようだ。しかし漢字を読み書きできるだけで、それほど企業に評価されるのだろうか。
 「漢検は単なる漢字の読み書き検定ではなく、文脈の中で適切に漢字を使うことのできる能力の育成を目的としています」
 確かに設問を見ると、文章の中の一部として漢字が問われている。2級の例題には「拘泥」や「幸甚」といった単語があったが、これらを適切な文脈で使うのはなかなか難しい。
 このように語彙だけでなく、言語として勉強できる漢検を、就活の際に評価するという企業も増えてきている。
 「特にここ1・2年でそういった企業が増えてきました。その背景には、人事部の方などの実感として『学生の言語力がかなり衰えている』という危機意識の高まりがあるのだと思います」
 高校生の約5人に1人が受検する漢検だが、2級に合格する高校生は全体の1%にも満たない。つまり、ほとんどの高校生が常用漢字をきちんと身に付けずに大学生や社会人になっているのが現状だ。そのような中で、例えばTBSのアナウンス部では内定後、入社までに漢検2級の取得を義務付けるなど、特にマスコミや出版業界では導入例が増えている。また取材中には、こんな面白いお話も。
 「私たちは言葉で物を考えますよね。その際に語彙数が多ければ多いほど、物事を正しく認識し、思考することができます。語彙が貧しければ、発想そのものが貧困になりがちですし、発想を言語化し他者に伝えることもままならないのではないでしょうか。つまり、漢字力・語彙力によって、自分の思考の幅は格段に広がるのです」
 思考の前提として語彙が必要で、さらにその思考を伝達する際にまた語彙が必要になるというわけだ。実際、言いたいことはあるのに表現する言葉が見つからない状況は誰しも経験があるのではないだろうか。
 最後に漢検2級を志す学生へ、「普段漢字を使っているからと言って侮ってはいけません。社会で必要とされる漢字力は、適切な訓練を行わずして身に付けることはできないのです。漢検で培う漢字力・語彙力は、きっと皆さんの生涯の財産になるはずです」とメッセージを頂いた。
      (岡本直人)

※昭和56年10月1日内閣訓令・告示の常用漢字表に基づく。