慶應義塾大学医学部生理学研究室特別講師の後藤聡氏が、脳の発達に必要な糖鎖を「遺伝子学的アプローチ」により明らかにした。同時に、その働きを制御する遺伝子群が新たに発見された。

糖鎖とは糖が鎖状に繋がったもので、非常に多くの種類がある。これが糖鎖の多様性と呼ばれるものである。また糖鎖は細胞の表面に存在し、特定の糖鎖が特定の蛋白質の決まった部位に付加される。これは糖鎖の特異性と呼ばれる。今まではこの多様性と特異性が、どのようにして調節されているのかがよく分かっていなかった。また糖鎖が多様であるため、役割が分かっていないものが多く存在した。

「遺伝子学的アプローチ」とは遺伝子を人工的に壊し、その後の経過を観察すること。今回の研究ではハエの遺伝子を人工的に壊し、その後のハエの発達がどう変化するかを調べるという方法がとられた。この方法で6年の月日をかけ、1万個の遺伝子をひとつずつ調査した。その結果、糖鎖を構成する新しい遺伝子が約100種類見つかった。さらに、神経系に特に作用する糖鎖が、脳や神経系の正常な形成に必須であることが分かった。

この実験の結果から、脳や神経系における原因不明の病気の解明が期待される。