日本精工が世界でトップシェアを誇るベアリング
日本精工が世界でトップシェアを誇るベアリング

あなたにとって、競争力のある企業の基準とはなんだろうか。世界に誇る高い技術力、グローバルな拠点展開、なにより世界ナンバーワンを目指す志。これら全ての条件を充たすのが、ベアリング(軸受)のトップメーカーである、日本精工株式会社だ。
 ベアリングとは、製品の回転運動によって発生する摩擦を軽減し、滑らかな回転運動を実現する部品である。回転部分の摩擦を軽減することで、機器の性能を上げ、寿命を長くし、故障を防ぐのがベアリングの役割だ。
 家電製品や自動車、飛行機など多くの製品は回転運動を伴う。この回転運動を支えるベアリングは、製品の性能に大きく影響を与えるため、製品にとって重要な要素部品である。
 日本精工は1916年に日本で初めて、国産ベアリングの生産に成功。今日に至るまで、高品質のベアリングは国内ナンバーワンとして、シェアの35%を占めてきた。
 日本精工の特徴は、歯科用のハンドピースに使われるミニアチュアからドーバー海峡を掘ったシールドマシンに使用される超巨大サイズまで、20万を超える種類のベアリングを製造できることだ。そしてベアリングの技術を中核として、自動車関連製品や精機製品の分野にも進出している。
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 そして日本精工を語る上で欠かせないのが、欧州、米州、アジアを拠点とした世界28カ国のビジネスフィールドだ。
 ほかの日本企業に先駆け、1970年代から海外へ進出。現在では、世界62拠点での生産、130拠点での販売を行っており、ベアリングの世界シェアは12・7%(2010年7月)。日本精工の売り上げ内訳は、51%が海外向け製品だ。
 今後の海外戦略について、人事部キャリア開発室・副主務の須賀博隆さんにうかがった。
 「今後はBRICsなど新興国での市場拡大に力を注いでいきます。規格が世界標準であるベアリング市場では、自社の高い技術力とお客様の要望に応えたカスタマイズ製品を供給できる柔軟性が強みとなります」
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 日本精工の新卒社員の3割は文系出身。理系が活躍できることはもちろんだが、経営を担うコア人材としての文系人材への期待は非常に高い。
 人事部グローバル人事室・副主務の島崎健仁さんは、求める人材像についてこう語る。
 「新しいところに飛び込んでいくことに二の足を踏んでしまう若者が多いと感じます。当社では、若手のうちから海外勤務や異動を通じて、多様な業務を経験してキャリア形成していくため、その中で自分を伸ばしていくことができる『自立型人材』を求めています」
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 日本精工は6年後に創立100周年を迎える。ベアリングは産業に欠かせない安定した事業。しかしベアリングを用いた製品は時代の流れに合わせて常に変化していく。100周年に向けて、世界シェアナンバーワンを達成することが日本精工の挑戦だ。
 消費者へのメディア露出が少ないBtoB企業の本質的な力を知ることは、学生にとって難しい。しかし日本が誇る高い技術力を武器に、グローバルに戦える会社こそ、変わりゆく時代に生き残ることができるのではないだろうか。 
(佐々木真世)