多彩なプログラムで交流の場づくり

皆で夕飯を食べるのも楽しみの一つ
皆で夕飯を食べるのも楽しみの一つ

「田舎のおばあちゃんの家に来たみたい」─三田の商店街を少し奥に入ると、そんな佇まいの家が現れる。2006年9月末から、慶大教員有志と三田商店街振興組合が共同で運営されているプロジェクト「三田の家」だ。
 地域の方から借り受けた木造住宅で、教員を中心にのべ10人の「マスター」たちが曜日ごと運営を担当する。オープンゼミ、地域イベントなど、それぞれの「マスター」の色が存分に写し出された多彩なプログラムが展開。
 「三田の家」メンバーによる会費と、慶大150周年先導基金からの支援、そして参加者のカンパで運営資金は賄われている。
  *  *  *
 今回お邪魔したのは月曜日。慶大日本語・日本文化教育センターの手塚千鶴子教授をマスターに、慶大外国語教育研究センター所員の日向清人講師らスタッフで運営。留学生との交流をメインに据えている。
 18時を過ぎた頃から、授業を終えた学生が、三田の家に続々と集まってきた。この日やってきたのは約30人。塾生や慶大への留学生だけでなく、他大学の学生・留学生、慶大内外の教員、そして地域の方々など、メンバーもさまざまである。
 まず始まったのは、慶大華道会による華道のデモンストレーション。華道の心得や流派の特徴の説明を交えながら、秦野芳明さん(商3)の実演が進められる。留学生の側に座っている学生が時折英語で通訳している光景が見受けられた。
 作品が完成すると、台所から良いにおいが漂ってきた。月曜日は「学生シェフ」によって夕飯が振舞われる。この日は鶏団子鍋と野菜の白和え。鍋を囲み、華を鑑賞し、三々五々に別れ、和やかな雰囲気の中で会話が弾んでいく。
 慶大の国際交流サークルPLURIOの代表を務めている成田勇介さん(薬2)は、月曜日の常連メンバー。「他学部の塾生、他大学の学生、一般の方々と、普段の大学生活では友達になれなかったであろう人と交流ができます」と「三田の家」の魅力を語ってくれた。
 ガネッシュ・バーヒースバランさん(経2)は、オーストラリアからの交換留学生。「留学生だけでなく、日本の学生とも交流したかったので、毎週通うようになりました」と話す。「参加する学生は、何かしらの人との関わり合いを求めてやって来ているので、仲良くなりやすいです」
 今回初めて参加した学生からも「今まで存在を知らなかったが、また来たい」、「意識の高い学生が多く、刺激し合える環境」といった声が挙がっていた。
  *  *  *
 5年目を迎えた「三田の家」。現在は更なる地域連携を進めるため、三田商店街と計画を練っているという。
 手塚教授が「最初は物静かだった学生が、積極的に会話に加わっていくようになる」と話すように、ここの雰囲気は人を変えるパワーを秘めている。
 三田キャンパス内にこうしたラウンジが設置されていないのが現状だが、すぐ近くに異文化・異言語交流の場づくりは実践されている。常に開かれた木の扉の中へ、一度入ってみてほしい。
      (入澤綾子)