【メディアの次世代―インターネット編―】慶大大学院メディアデザイン研究科教授

インターネットの可能性を展望

中村伊知哉。1961年生まれ。京大経済学部卒。ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。98年の退官後は渡米、MITメディアラボ客員教授などを歴任。現在は、融合研究所代表理事などを務め、慶大大学院メディアデザイン研究科教授。著書に『デジタルサイネージ革命』など。
中村伊知哉。1961年生まれ。京大経済学部卒。ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。98年の退官後は渡米、MITメディアラボ客員教授などを歴任。現在は、融合研究所代表理事などを務め、慶大大学院メディアデザイン研究科教授。著書に『デジタルサイネージ革命』など。

これまで本連載では既存メディアとインターネットの関係を主に論じてきた。今回は、これまでのまとめとしてメディアの大きな変化の根幹となるインターネットを取り上げる。最終回として慶應メディアデザイン研究科の中村伊知哉教授にインターネットの今後についてお話を伺った。
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これまでのインタビューから、新聞・テレビの衰退を考えると、インターネットはほかのメディアを飲み込んでしまうのかという疑問が出てくるが、次のように中村教授は答える。
「既存メディアは全部形を変えて残ると思います。その中でデジタルサイネージのような次世代メディアも出現し、多様化の方向に向かうでしょうが、インターネットメディアと既存メディアに共通する部分はメディア同士の境界が無くなりコンテンツが自由に流通するでしょう」
コンテンツの流通においてテレビ番組のネット配信が中々進まないという現状があるが、中村教授は「番組の権利処理自体に問題はありません。ビジネスとして成功例がなかったので、配信がビジネスになるとわかればどんどん増えてくるでしょう」と述べる。中村教授は実際に流通しやすい市場・わかりやすい権利情報をつくることを大学で実験している。成功例が増えれば、投資をする企業も増え、問題は解決に向かうと考えられるからだ。
現代人のコミュニケーション形態は掲示板やミクシィの利用などで大きく変わってきた。その中で偽りの情報が流れるという問題がたびたび取り沙汰される。だが、中村教授はすべての情報が間違っているわけではなくて、共有する情報量は個人の持つ量より遥かに多く、メリットのほうが大きいという。
また今の若者はテレビ、携帯電話、パソコンを同時に開くなど、複数のスクリーンに同時に接している。
新聞や雑誌がすべて紙であるという固定観念は、電子ペーパーの本当の紙のような進化により変わる。また、中村教授は未知数ながら、Amioという地上デジタル放送の電波で雑誌・新聞記事を見られるようにする実験も計画している。この方法が普及し、若者が雑誌・新聞も良いと思えば回帰もありうるのではないかという。
「日本のユーザーは面白く、厳しい」と中村教授は語る。ここ数年新しく生み出されたものはグーグル、ニコニコ動画などすべてユーザー主体のものだった。これからもその傾向は続くと考えられるが、そこに日本のチャンスがある。日本のユーザーは自然と携帯電話などの端末の新しい使い方を見出したり、機能を批評したりしている。その自然としていることが新たな可能性の入り口となりうるだろう。
中村教授は「ようやくインターネットが普及したところで、具体的なインターネットの在り方が見えるのは10年後でしょう」と見解を述べた。実際のところ現在ネット上の商取引は1・8兆円と小売流通全体の1・5%しかない。しかし、メディア業界全体が曲がり角の今、将来インターネットが主軸となり、メディア同士の境界がなくなるのは間違いない。問題はいかにうまく利用していくかだろう。

(太田翔)


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