慶應塾生新聞会 三田オフィス
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【学生時代の必読書を教授が指南】文学部教授 浜日出夫 君

 毎年私は日吉で社会科学特論という講義を担当している。ここ数年この講義は毎週1冊新書・文庫・ブックレット類を読んで議論する、というやり方で進めている。月曜1限という悪条件にもかかわらず、毎年20名の定員に対して3倍くらいの希望者がある。どういうことに関心を持っているか短い作文を書いてもらい、できるだけ多様な関心をもつ人に入ってもらうという基準で選考している。

 新書には歴史・地域などに関する教養書的なもの、パソコンなどに関する実用書的なものが多くあるが、この講義では現代社会のアクチュアルな問題を扱ったものを中心に読んでいる。したがって格差・雇用・教育・犯罪・少子化・年金・ナショナリズム・メディアなどに関するものを取り上げることが多い。「トンデモ本」が多いのも新書の特徴である。それをもとに議論できればそれでかまわないので「トンデモ本」も読む。だから『国家の品格』も読むし『美しい国へ』も読む。

 1冊につき2人ないし3人の報告者を立てる。1冊を分担するのではなく、それぞれが全体を担当する。新書類はもともと一般向けに書かれており、読めばわかるはずだし、「トンデモ本」を要約しても意味がないので、要約はせず、自分がポイントだと思った点、おもしろかったところ・疑問に思ったことなどの感想、議論したいと思う論点を1枚のレジュメにまとめて報告してもらっている。そのあと全体で議論する。

 新書は机に向かって線を引きながら読む必要はない。私自身この講義の準備はほとんど大学の行き帰りの電車の中で行っている。ここは大事だと思うところは頁の耳を折っておけば十分である。

 雨の日も寒い日も、早慶戦で2限以降休講の日も、毎週1冊、1年で約20冊の読書マラソンはけっこうきびしいはずだが、毎年リタイアは1割程度である。これまでで一番うれしかった感想は「新聞を読むのが楽しくなりました」というものだった。

 最後にこれまで読んだものからいくつかお勧めを挙げておく。佐藤俊樹『不平等社会日本』中公新書、本田由紀・内藤朝雄・後藤和智『「ニート」って言うな!』光文社新書、浜井浩一・芹沢一也『犯罪不安社会』光文社新書、高原基彰『不安型ナショナリズムの時代』洋泉社新書、盛山和夫『年金問題の正しい考え方』中公新書。

 毎週1冊新書を読む、みなさんもぜひ挑戦してみてください。

不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)「ニート」って言うな! (光文社新書)犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)不安型ナショナリズムの時代―日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由 (新書y)年金問題の正しい考え方―福祉国家は持続可能か (中公新書)