関東大学バスケットボールリーグ戦(リーグ戦)が終わり、大学ナンバー1を決める全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)がいよいよ迫ってきた。慶大は、昨年のインカレでは優勝を勝ち取り、今年は連覇がかかっている。慶大が以前連覇を果たしたのは1949年からの3年間のみである。ここで優勝して、慶大の強さを見せ付けて欲しい。

指導者と選手との間のズレ
指導者と選手とのズレをいかに解消していくかが課題である。(10月31日、瑦??戦でのタイムアウト時)
指導者と選手とのズレをいかに解消していくかが課題である。(10月31日、筑波戦でのタイムアウト時)

春からの慶應の功績を振り返ってみると、関東大学バスケットボール選手権大会では優勝、関東リーグ戦では2位に終わった。
目指し続けてきた全国制覇を成し遂げられる、集大成ともいえる大会が目の前に迫っている。しかし、1部優勝を目指していたリーグ戦で惜しくも2位となってしまったことからもわかるように、不安な点がある。
それは、指導者と選手の間のズレだ。
リーグ戦の終盤になり、なかなか慶大らしい速攻のプレイが出なくなった。勝利したとしても、そこには選手の満足な顔はなかった。その原因は、指導者と選手の間のズレにあったといえる。

「ズレっていうのは、僕の感覚と(選手の感覚と)のズレのこと。ベンチと(試合を)やってる連中の思い描いていることが、大きく違ってくるのは致命的。負け試合っていうのは全部そういうこと」(佐々木ヘッドコーチ、11月14日に行われた六大学リーグの法政戦後)

ズレとは、佐々木ヘッドコーチは、上手くいかないときこそ、落ち着いて修正をすることを望んでいるが、一方でムキになってプレイを続ける選手もいるということである。
そのズレが顕著にみられたのは、リーグ戦第4週の専修大戦だ。当時、相手の専修大は0勝6敗中。4勝2敗中の慶大にとっては手古摺る相手ではないはずであった。だが、81-79で何とか勝利はしたものの、慶大に攻撃のチャンスを与えないようなゆっくりとしたプレイをする専修大に合わせてしまう試合運びでとなり、そこで初めて「すり合わせがうまくいっていない」と学生とコーチの間にズレがあると佐々木ヘッドコーチはこぼした。
第5週の中大戦では、選手一人ひとりのよいところが発揮させて、チームの連携をしようというよい雰囲気を感じられ、ズレは解消されたかのように思われた。
しかし、第6週の法大戦、続く筑波戦で再びズレが慶大を苦しめ、両者に1敗ずつ喫した。

「(選手たちは)泥臭くやるって言っているけど、僕に言わせるとそうではなくて、次に同じミスをしないような工夫をするっていうのが大事なこと。もう一つは、自分の調子が悪かったら、隣の人を、チームメイトを光らせるような努力をしないと」(佐々木ヘッドコーチ、第6週・10月24日の法大戦後のコメント)

この言葉は、それぞれがうまくいかない時に、次はどうするかという判断を的確にすべきという慶大の課題を示している。

明確になったズレの解消を
「賢いプレイ」を求められている小林。インカレでは本来の力を発揮して欲しい。
「賢いプレイ」を求められている小林。インカレでは本来の力を発揮して欲しい。

特に、小林(福大大濠・4年)について佐々木ヘッドコーチは次のように話していた。

「僕はいつも打っていいよ、打っていいよと言い続けているんですよ。その代わり、賢くやってほしい」

毎試合、得点の多い小林のシュートが、入らないシュートを無理矢理打つことが多かった。「賢くやってほしい」という言葉には、思い通りのプレイができなかったとしても、そこで落ち着いて修正をしてほしいという意味があるのだ。実際に中大戦では一人ひとりが賢いプレイをしてまとまりのあるプレイができていたが、負け試合ではなかなかそういったプレイができずに苦しい状況が続いていた。それは小林だけではなく、他の選手に対しても言えることだ。リーグ戦終盤、調子の振るわなかった二ノ宮(京北・3年)についても、「最近の崩れ方が不可解」(10月31日、第7週・筑波大戦後)と佐々木ヘッドコーチが話していえることから、ズレが生じていることがうかがえる。
酒井(福大大濠・3年)についても、まだまだ本領を発揮できていないということもあるが、それはプレッシャーがかかった状態でも上手くいかないプレイをやり続けていることがあるからである。

チームの起爆剤として活躍を期待される酒井。日本一を勝ち取る鍵を握っている。
チームの起爆剤として活躍を期待される酒井。日本一を勝ち取る鍵を握っている。

しかし、田上(筑紫丘・4年)、岩下(芝・3年)については、佐々木ヘッドコーチが思い描く賢いプレイができていると高評価であった。とりわけ、キャプテンの田上については、「自分の力をきちっと出している。他の連中もできるようにならないと、こういう試合(六大学リーグ法政戦)でも今まで練習してきたこと、走ったり守ったりすることを練習してきたわけだから。キャプテン自らできるということは心強い」と話していた。
キャプテンが自分の力を出しきれていることは、チームをよい方向へと導くことができる可能性がある。あとは、「チームを変える、乗せていくということをするにあたって、まず4年生が自分のやるべきことをやって、そのあとチームに浸透させていかなきゃいけないと思っている」と田上自身も話すように、リーグ戦が終わってからの1ヶ月間で賢いプレイがチーム全体に浸透し、ズレを解消ができたかどうかが勝敗を左右するといっても過言ではない。

インカレ注目選手は、リーグ戦第3週・日大戦の記事でも取り上げたチームの起爆剤である酒井だ。
「あの子が頑張ると(小林)大祐も田上も楽になる。あの子が今年のインカレのキーポイントとなると思います」と佐々木ヘッドコーチが中大戦後に話していた。この中大戦で、酒井は35得点を決める頑張りを見せた。インカレでは、苦しくなった時にこそ持ち味を出して、チームに勢いをつける仕事をすることに期待したい。

いよいよ12月2日から大阪市中央体育館で、日本一をかけた熱い戦いが始まる。慶大は、昨年も1回戦で戦いっている北海道1位の北海学園大との対戦でスタートをきる。最後は吉報を届けられるように、健闘を祈りたい。

文:阪本梨紗子
写真:阪本梨紗子、金武幸宏、井熊里木