「なでしこりか」という愛称で親しまれている
「なでしこりか」という愛称で親しまれている

正午の東京駅。待ち合わせ場所にトランクと大きな紙袋を両手に持ちながらその人はやってきた。
今回取材したのは現在慶大法学部政治学科3年の矢島里佳さん。大荷物のわけを聞くと、朝からAO入試のセミナーを1つこなし、取材後すぐに徳島県に飛び、地域活性化のコンテストに参加するという。
「好奇心がとにかく旺盛なんですよね。あまり物事をできるかできないかでは判断しないです。常にチャンスの種を探して、すぐチャレンジしちゃう」とそのアクティブさを感じさせないようなおっとりとした口調で語る。
矢島さんは法学部FIT入試で高3の9月に慶大の合格を決めた。
「入学までの半年間、自分だけ時間を無駄にすることだけは嫌だった。もう一度何か受験をしたいと思っていました」
その思いを胸に、高校3年生の冬、TV東京の「TVチャンピオン2 なでしこ礼儀作法王選手権」に応募、優勝を勝ち取った。「和テイストの小物などが大好きだったり、高校で華道と茶道をやっていた影響もあって、元々日本の伝統文化や和の心が好きでした。TVチャンピオンに応募したのも、自分の興味がある分野の選手権だったので楽しんで挑戦できそうという期待があったから」と話す。
矢島さんの活動はそれだけに止まらず、自分の興味やその人自身を最大限にアピールして大学合格しようというコンセプトを元に、AO入試の存在を世の中に広めたいという思いを持つ。慶大入学前に約7万5000字の仮原稿を執筆、それを自ら出版社に売り込み、「やばい!戦略的AO入試マニュアル」「AO(FIT)入試で慶應大学法学部に合格する!!」を大学1年生時に出版し、「なでしこりか」の名前でAO界のカリスマとなった。
「大学生だからこそできることってとても多い。利害抜きで、大学生という成長の伸びしろがある立場に期待して大企業の社長さんもポンと会ってくれたりするんです。沢山の人と会って吸収して成長する。それが私の進化の糧なのかも」と語る。
矢島さんは現在、日本の和を発信することに活動の重心を置く。JTB西日本のフリーペーパーで伝統文化の若き担い手を日本各地に出向い紹介する連載や、毎日コミュニケーションズ「マイコミジャーナル」において「なでしこりかの東京和デート指南」の連載を持ち、若い世代の視点で和を紹介している。
「何かに挑戦するとき、失敗を恐れないことが重要。私はもし失敗しても、それを次に繋げて、成功へのワンステップにしちゃいます」と語る。
また、和に興味がある大学生を集め、和を発信する国際人の育成を目標に、学生団体「和愛」を立上げた。「講演会の講師として日本舞踊の師範を持つ大学生を招いたり、日本の伝統文化と若い世代の人々の繋がりが少しでも近くなる事を目標としています。日本文化を深く知ることは、留学や旅行に行き、海外の方とコミュニケーションを取るときにもすごく役立つ。語学だけでなく深い付き合いをするための潤滑油になると思うんです」

失敗恐れず 次に繋げる

ここまでアクティブに活動する彼女だが、一大学生として、サークルや授業の参加にも余念がない。「興味の薄い授業があったとしても、例えば歴史上の人物の成し遂げたことを、現代の経営陣としてのリーダー論に置き換えるなど、自分で興味のある方向へ持っていきます」と笑顔で言う。
将来の目標は「和の花咲かせ職人」。「色々な人が和の心を知るのが花を咲かせる第一歩。そのために私も自分の成長を自分で止めないで、自らの可能性を広げたい」と話す。
彼女の驚くべきアクティブさやモチベーションの裏には、自らが成長していく楽しみや本当に好きなことを一貫して行うという純粋な気持ちが強くあるのだろう。スーツケースを転がし去っていく彼女の真っ直ぐな後姿からは、次なる出会いや成長への期待で胸を一杯にしている様子が伺えた。
(西村綾華)

矢島里佳さんの活動に興味のある方はinfo@nadeshiko-rika.comまで。