「イマドキの若者」は蚊帳の外ですか?
「イマドキの若者」は蚊帳の外ですか?

「議員事務所で働いています」。そう語る若者に、あなたはどのような印象を抱くだろうか。反応は様々だろうが、おそらく多くの人々が「珍しい」と感じることだろう。
しかし近年、少なくない学生が議員事務所での研修活動を経験している。青春の一時を議員と共に過ごす学生たちの姿を追った――。
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NPO法人ドットジェイピーは、春休みと夏休みの年2回、主に大学生を対象に、議員インターンシップ(議員事務所への研修)事業を全国で展開している。学生が政治に抱く距離感を縮め、低迷する若年層の投票率を向上させることが狙いだ。
議会・委員会の傍聴や、調査報告、支持者訪問に、ポスティング……活動内容や受け入れ条件は事務所によって実に様々。議員と学生、両者の希望を調整することにドットジェイピーの意義があるが、その運営を支えるのは、200人近い学生スタッフだ。ほとんどのメンバーが同団体のインターンシップを一度経験している。杉本真希さん(政3)は、「遊んでばかり」の大学生活に漠然とした不安を感じ、1年生の時に国会議員のもとで研修を体験。その後、学生スタッフを志望した。 「議員と学生の双方から、『良い人を紹介してくれてありがとう』と言って頂けるのが最も嬉しい」
同団体の創立者である佐藤大吾理事長は「大学で学んでいる学問が政治の現場でどう応用されているか知ること」が学生にとっては重要だと説く。「単に事務所の雑用をやらされるだけ」といった批判に対しては、仕事を単なる雑用と捉えるかどうかは想像力次第だと断言。「大切な仕事」というものも本を正していけば、コピーやビラ配りといった、多くの「世に言う雑用」によって支えられている。このことを「想像できるかどうか、あるいは想像させてくれるような説明を受けられるかどうかが、議員インターンシップの善し悪しを決める」と佐藤氏は語る。
団体設立から11年。与野党の大物から地方の無名に近い議員まで、総勢3573人もの議員が同団体の斡旋した学生を受け入れてきた。公職選挙法上、学生に金銭的な報酬は一切支給されないが、参加者は通算で9078人にのぼる。関東では慶大からの参加者が最も多いという。
泉隆一朗さん(経1)もこの夏、同団体による議員インターンシップに参加した一人。大学入学後、様々な活動に取り組む高校の旧友たちにどこか「負い目を感じていた」という。そのようななか議員インターンシップの存在を偶然に知り参加を決意。国政と比べて情報の少ない地方政治に目を向けようと、地方議会に所属する議員を研修先として選択した。
住民による陳情や、有権者の要望を丹念に活動に反映させる議員の姿などを目の当たりにし「政治が身近なものだということを一番感じた」という。
議員インターンシップを実施している団体は、ドットジェイピーばかりではない。薗部誠弥さん(法2)は慶應高校時代、アイカスという団体を通じて、地方議員のもとでのインターンシップに参加した。「自分は内部進学者。受験勉強のようなハードルがない分、何か別の経験で武装したかった」。事務所での活動には「政治的影響を受ける」との懸念も存在する。実際、薗部さんも受け入れ先の議員の主張に触れる機会は多かったが「活動が高校生には早過ぎるとは全く考えていない」という。.
「ただ、これは自分の意見ではなく、○○党の人の意見だと意識して聞くことは重要」
また仲介団体を通さず、事務所のスタッフとなった学生もいる。村松康彦さん(政2)は、「国家公務員を目指すうえで参考になると思い」インターネットで人員を募集していた官僚出身の若手議員のもとへ、自ら直接連絡をとった。
「議員事務所での活動は経験したほうがいいと思う。政治家が世間から離れている、というイメージはまずなくなる」
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事務所によって活動に相当な違いがある以上、一概に議員インターンシップなどの是非を語ることはできない。しかし説明会などに一度参加してみることだけは、強く勧めたい。魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)するといったイメージとは少々違った「政治」の姿が垣間見られるはずだ。                             (花田亮輔)