《ポスト平成のジャーナリズム》「バズる」よりもブランド向上目指す 朝日新聞の戦略

ポスト平成のジャーナリズム

朝日新聞編集局長補佐兼コンテンツ戦略ディレクター 藤谷健さん

朝日新聞社東京本社の編集局。フロアの中央には編集長が座り、その上には大きなモニターにグラフや数字が映し出されている。社内で独自に開発されたデジタル指標分析ツール「Hotaru」だ。

画面には記事が読まれた時間帯や回数、読者のニュースに接した経路といったデータなどがリアルタイムで表示される。記者であればいつでもパソコンからアクセスすることができる。

朝日新聞が独自に開発したデジタル指標分析ツール『Hotaru』

「『Hotaru』ができて初めて知ったのは、自分たちの記事がいかに読まれていないかということ」。そう話すのは、朝日新聞編集局長補佐兼コンテンツ戦略ディレクターの藤谷健さんだ。紙の時代には、読者にどのような記事が読まれているのか、分からない部分が多かった。「Hotaru」を使えば、読者のニーズに応えた記事を作ったり、ネットで最も読まれる時間帯やサイトを意識した配信を行ったりすることができる。「Hotaru」はどうすればより多くの人にリーチすることができるかを考える「一歩踏み出すためのツール」だと藤谷さんは表現する。

朝日新聞の記事はインターネット上でも閲覧でき、特にデジタル版の「朝日新聞デジタル」に力を入れている。月額料金を支払えば、スマートフォンやパソコンで記事を読むことができる。一方で、無料記事はヤフーニュースでも配信している。閲覧された回数(PV数)に応じて新聞社にお金が入る仕組みだ。

PV数は、話題の事柄であるほど多くなる傾向にある。しかし、ヤフーニュースでは、配信元がどこかを意識することは少ない。朝日新聞が目指すのは、読者と長い付き合いをしていくことだ。「新聞社としては一つの記事で『バズる(注目を集める)』のではなく、ブランドとして支持されることに力を入れたい」と藤谷さんは語る。

そこで朝日新聞は今、PV数だけではなく、その記事がどれだけ朝日新聞デジタルの有料会員登録につなげられたかを示すCV数(conversion)を意識している。「朝日新聞の記事だと知らずに一つの記事を読みに来た読者をいかに新聞社の長期的な顧客にするかが課題」

最近では、紙面より先にデジタル版で記事を掲載することがある。例えば昨年11月、世界に大きな衝撃を与えた日産のカルロス・ゴーン氏逮捕のニュース。どの新聞社よりも早く第一報を出したのは、朝日新聞だった。従来、特ダネは朝刊まで取っておくのが常識だった。しかし、より早く読者に情報を届けるためデジタル版で速報を打った。デジタルファーストの考えが朝日新聞にも浸透しつつある。

デジタル化を進める朝日新聞だが、紙面の改善も行う。朝日新聞にとって紙とデジタルは車の両輪だ。紙面改革を4月に向けて進めている。「デジタルはフロー、紙はストックとしての性質が強い。デジタルで第一報が流れる今、朝刊が発行されるタイミングでは、ニュースを既に知っている場合が多い。これからは、ニュースを深掘りした記事を載せることが多くなるのでは」

朝日新聞の紙とデジタルの新しい価値を見つけるための絶え間ない努力は続く。

(原田実希)


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