私たちが住む地球の遥か彼方から、幾多の星の光が届く。人間は昔からずっと星を眺めてきた。星をなぞって星座を作り、数々の神話を生み出した。

街の明かりが強くなった現代でも、人々の星への思いは消えない。そう思わせてくれる塾生たちがいる。冬の夜空の下、矢上キャンパスにやってきたのは、宇宙科学総合研究会LYNCSの天文研究本部の皆さん。流星などの天体観測を中心に行っている団体だ。

部員の一人である西尾真さん(総2)は「地球上で起こせる物理現象は小さい。でも天体現象なら、物理の発展に貢献するようなスケールの大きい物理現象が起こりうるのが魅力的」と話す。

サークルの活動は主に二つに分かれる。三田祭におけるプラネタリウムの展示と、長期休暇を利用するなどして定期的に行われる大規模な観測会である。また、個人で観測会とは別に観測を企画することも多い。観測場所は様々で、静岡・下田や湘南藤沢キャンパス、山梨・清里はよく訪れるそう。鳥居が星空と一緒に写せる茨城・大洗などは人気が高いポイントだという。天体の写真を撮るのが好きな部員もいれば、プラネタリウムに力を入れている部員もいて好みは多様だ。

取材を行った昨年12月半ばはふたご座流星群とウィルタネン彗星という大きな天体ショーが起きた時だった。流星は宇宙空間に漂っている塵であり、地球に突入してくるのが発光して見えるのが特徴だ。中でもふたご座流星群は特に見られる数が多く、ふと夜空を見上げても、見ることができる。ウィルタネン彗星は5年周期の彗星で、特徴的な緑色の尾が見られる。彗星の中では肉眼でも見ることができる三等星である。

ところが取材当日、残念ながら空には雲がかかってしまった。辛うじて月は見えたが、取材班は天体ショーを見ることができなかった。普段から観測を行う部員たちも天気には悩まされるという。口をそろえて「一番欲しいのは晴れ男の部員」と冗談交じりに言う。

流星は年に数回観測することも可能だが、彗星は周期が長く、明るい彗星は多くないので、観測が難しい。見られるかどうかは、まさに星の巡り合わせである。「大学在学期間を通り越して、一生の趣味にできる」と副代表の南方宏太さん(理2)は話す。

レポートを書く合間など、特別な時でなくても星を眺めることに楽しみがあるという。彼らはそんな無限大の可能性を秘めた星空に魅了されているのだろう。

(湯宇都)