早大に新しい学生新聞が誕生しようとしている。その名も『早稲田新聞』。発行団体である早稲田大学学生新聞部は昨年11月に発足したばかりだ。なぜ今、早大に新しい学生新聞を立ち上げようとしているのか。関係者に経緯と展望について迫った。

早稲田大学学生新聞部は、学生目線から学内情報を総合的に取り扱うメディアを立ち上げるという目的の下に結成した。およそ20名の部員がおり、文学部生と政治経済学部生が多いものの、大半の学部から参加者がいるという。早大全体のニュースを幅広く取り扱うことができる構成だ。

もともと早大には、1922年創刊の『早稲田大学新聞』があるが、60年代以降革マル派と接近し、政治色の強い新聞となった。そして、99年に早大当局に公認を取り消されて以来、『早稲田スポーツ』を除き、早大公認の学生新聞は存在しないことになっている。また、学内には『早稲田ウィークリー』という学内メディアも存在するが、大学側が発行しており学生主体ではない。

「『早稲田ウィークリー』は情報それ自体の公益性の高さは認められるが、学生側の立場や意見を反映できていない部分がある」と副幹事長の若宮潤さんは指摘する。『早稲田新聞』は大学や政治、その周辺の圧力に左右されず、学生目線から自治的かつ適切な形で伝えるメディアを目指している。他の学内メディアとは、つかず離れずの共存路線を望んでいるとのことだ。

近年はウェブを中心に据える学内メディアもある中、新聞部はあえて紙媒体を要としている。それはなぜか。紙媒体の良さは一覧性に優れ、伝えたい情報を視認させやすいことと、新聞ならではの信頼性の高さが挙げられる。また、早大周辺の飲食店などにも置いてもらうことができ、学生のみならず地域住民にも読んでもらえる。ウェブでの情報発信を怠るというわけではなく、紙媒体の方が幅広く読者を確保できるのではないか、と考えてのことだという。取材の成果を形として残したいという思いもあるようだ。

新しい学生新聞の船出は前途多難だ。非公認団体のため、部室や大学からの補助もなく、資金面に苦労している。公認団体になるには、活動実績と顧問となる先生が必要だ。

今後は1月に壁新聞やポスターなどの形式で創刊へ向けた発表を行い、4月からの定期発行を目指す。4月号では田中愛治新総長や戸山キャンパスの新体育館についての特集を組みたいとのことである。「重大な出来事に対する学生の意見を聞いていきたい」と幹事長の白石知愛さんは話す。

新しい新聞をつくるのは容易なことではない。それでも、学生本位の公平・中立な新聞という、早大に欠けていたメディアを立ち上げようと新聞部は努力している。「早慶」の一方を担う大学での学生新聞の復活は、本紙記者として応援したいところである。

(中川翼)