《テレビマンの肖像》「アメトーーク!」プロデューサー テレビの仕事はくだらなくて面白い

テレビマンの肖像

テレビ朝日のスタジオで、その人は親しげに芸人と語らっていた。「アメトーーク!」「金曜★ロンドンハーツ」のプロデューサーや演出家として活躍する加地倫三さんだ。番組収録時に出演者の近くで指示を送り、時に出演者に絡まれる加地さんの姿を、一度は見たことがあるのではないだろうか。

「『次どうするか』を瞬時に指示するために、近くで演者の顔を見て空気感を感じ取り自分で判断したい」。常に現場から番組作りに関わることを、加地さんは大切にしている。

「自分の好きなもの、番組作りをしていて楽しいものをやりたい。深夜に関しては、視聴率はそこまで気にしない」と加地さんは言う。とはいえ、同時に結果も出さなければならない。番組を終わらせないためには多くの人に見てもらう必要がある。そのための「バランス」が重要なのだという。

加地さんは番組製作を通じて「間口は広く、徐々にマニアックにしていくことで視聴者をマニアックに引きずり込む」ことを念頭に置くという。「アメトーーク!」では、ある一つのテーマに基づき出演者を集め「○○芸人」と題し、トークを展開する。ある漫画を取り上げた企画だと、既にその漫画のファンの視聴者と漫画について無知な視聴者とが存在する。そのため知らなかった人がコアな部分に入り込み、新たに面白さを発見できるような仕掛けになっている。セットを派手にしているのは仕掛けの一つだ。その上で元々のファンも納得する内容である必要がある。テーマの中でどこをどう取り上げるかは難しく、絶妙なバランスが必要とされる。

「アメトークは若い人に見てほしい」と加地さんは話す。近年、高齢層を狙った番組の視聴率は高くなるものの、若年層を狙っても視聴率は取れにくいという。「だけど、若い層に見てもらえると嬉しいし、なんとなく見てる人で20%取るより5%が熱狂的に見てくれる方がうれしい。会社の方針もあるからそれはバランスだけど」

近年、ネットの存在が大きくなっているのも事実。しかしテレビという制約もあるメディアで、コアな企画が誰かの心に強く刺さること、そしてより多くの人の心に刺さることが何よりも嬉しいと言う。「テレビには伝える、広める、呼びかける力がある。だからやめられない。斜陽産業と言われたとしても、まだ粘りたい」と力強く語る。

「自分がやりたいと思ったものを数百万人、時には一千万人以上もの多くの人が見る。こんなにくだらなくて面白い仕事はない」と話す加地さん。今後について今ある番組を存続させることが第一だと熱く語る。「一つのレギュラー番組が一つの会社みたいなものだから」。加地さんは今日もスタッフとお笑い芸人とともに、視聴者を笑顔にさせる番組を作り続けている。

(髙根奈々)


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