「ファッション」という言葉は元々「流行」を意味する。20世紀初頭、社会学者ジンメルは「流行」という題の論文で流行の発生原因を分析した。

「モボ・モガ」「アンノン族」「ボディコン」「アムラー」「森ガール」……ファッションはいつだって社会に寄り添ってきた。本書はファッションを題材に社会を、社会学を探っていく本である。

みなさんが今着ている服、「どうしてそのコーディネートを選んだのか」と問われたらどう答えるだろうか。

ファッションなどを通して外見を整える理由として、「自分のため」「他者のため」が想定される。本書ではさらに「自分」とは、そして「他者」とは誰かを掘り下げていく。

20~30代の若い世代に特徴的なのは、彼らにとっての「他者」が恋人や配偶者、同性の友人といった「自分の近くにいる類似した感性の他者」であること。そして「自分」とは他者のまなざしの中で作り出される「自分」であることなのだそう。

親よりも友達におしゃれと思われたいと考えている人、友達と服の趣味が似ていると思ったことがある人、はたまた客観的に見たときに「あの集団、服のテイスト一緒だな」と感じたことがある人もきっといるだろう。このように私たちに身近なファッションを通じ、アイデンティティ形成について社会学的視点から分析をすることができる。

本書ではほかにもファッション誌やコスプレ、ファストファッションやモデル業界といったファッションに関連する様々な切り口から社会を研究している。

まずはピンときたトピックから社会学の入り口に立ってみるのはどうだろうか。

(高井日菜子)

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日吉図書館・1F特設コーナーにて、「ファッションで社会学する」を展示中! 貸し出しもできます。