350円で貧困を救う 雑誌『ビッグイシュー』

ビッグイシュー日本 東京事務所スタッフ・佐野未来さん

『ビッグイシュー』という雑誌を知っているだろうか。聞いたことも見たこともない人は多いのではないだろうか。

それもそのはず、ビッグイシューは普通の雑誌と販売経路が異なり、書店などでは売っていない。ホームレスの人が販売者となり、この雑誌を路上で販売している。一冊350円の売り上げのうち、半分以上の180円が販売者の収入になる仕組みだ。

もともとは欧米発で「ストリートペーパー」と呼ばれ、路上生活者の自立支援を目的で発行される新聞や雑誌を指す。ビッグイシューは草分けで、イギリスで始まった。

ビッグイシューを日本で発行する「有限会社ビッグイシュー日本」では、炊き出しでのビラ配布などで、販売者の募集をしている。新宿で販売者として働いている人に話を聞いたが、彼も炊き出しでビラを見た一人だった。地方での派遣の仕事が減り、生活が厳しくなったため、新宿に流れ着いたという。5年ほど路上生活をしていたが、自力で路上生活を脱したいと、この雑誌の販売を始めた。最近、関連団体「認定NPO法人ビッグイシュー基金」の支援もあり、アパート入居ができた。

誌面では、人権問題はもちろん、著名人のインタビューや、広く社会問題に関する記事を読むことができる。ビッグイシュー日本の東京事務所スタッフの佐野未来さんは「ビッグイシューの活動に共感して幅広い分野の著名人が協力してくれることも多い」と話す。また、世界のニュースはストリートペーパーの国際的なネットワークから入手できるため、日本の大手マスコミが取り上げることの少ない現地の情報を手に入れることもできるという。

ビッグイシューでは実に種々様々なニュースが取り上げられる。世界には様々なアイデアを持った人がいるということを提起することで、読者に新たな人生の可能性を見出したり、考えるヒントにしてほしいという願いがあるからだ。

では、この雑誌をどのようにして購入すればいいだろうか。佐野さんは「ぜひ、販売者から直接雑誌を購入してみてほしい」と言う。雑誌を購入する際のやり取りや、何気ない交流が支えとなるのだそうだ。記者が話を聞いた人も「常連のお客さんも増えた。声をかけてもらうことがうれしい」と話していた。

近年のホームレスの若年化が心配だと佐野さん。不安定で低賃金の職に就き、ネットカフェなど不安定な住まいで暮らす若者が増えたという。子供の貧困が増える背景には親世代の貧困の増加がある。生活保護に関しても本来必要とする人の3割程度しか受給できていないが「不正受給はほとんどないのに、ネガティブな報道ばかりされることで、生活保護を受けている人が社会参加することが難しくなる」

「大事なのはみんながどんな社会に暮らしたいかを真剣に考えること」。誰もが安心できる社会が理想だと佐野さんは話す。あなたもビッグイシューを手に取って、一緒に考えてみるのはどうだろうか。

(椎名達郎)


PICK UP:

  1. 命削って貫いてみせる 青函トンネル、13日に開業30周年
  2. 日本の風薫る街 地震が襲った台湾・花蓮県に行く
  3. 《受験生応援特集》英語講師・関正生先生に聞く 塾生の英語との向き合い方とは