「もし、学校にいる間に災害に直面したら?」大災害はキャンパスにいる間も起こるかもしれない。

東京都では、大災害により公共交通機関が運休して当分復旧が見込まれない際、混乱を避けるためにむやみに移動しないよう、2013年に施行された。キャンパスで被災した場合、そこにとどまらなければならない可能性がある。

三田キャンパスは、東京都の広域避難場所に指定されている。キャンパス内に学生・教職員などが滞留する場合を想定し、義塾管財部は防災対策の強化を進めている。

最たるものが、各キャンパスで管理されている防災用備蓄品だ。飲食料品のほかに、衛生用品、搬送用具や発電機など、多くの備蓄品が揃えられている。

管財部は、従来の保存飲料水、クラッカー、カロリーメイトの備蓄に加え、今年度から非常用備蓄食品セットの保管を始めた。このセットはアルファ化米2食、ライスクッキー、長期保存型ようかんの4品で、一つの小箱に封入されている。誰でも食べることができるよう、アレルギーフリーの食品を採用している。

非常用備蓄食品セットは、配布の負担軽減を図り、一箱約630グラムという軽さを実現しているが、人間が1日に必要な1500キロカロリー以上を摂取できるというカロリーの高さもこだわりだ。約6000人の滞在者を想定し備蓄されている。

また、三田キャンパス構内にある自動販売機のうち、12カ所は災害対策機となっている。非常時には、ここから無償で飲料を取り出せる。水の確保に関しては、防火水槽を水源とした飲料用ろ過装置の設置や、仮設給水タンクの備蓄といった対策もなされている。

現在、三田キャンパスにある図書館旧館では免震工事が進行中だが、構内の主要な建物については、耐震対策がすでに行われている。地震が起きた際に校舎の中にいる場合、不用意に外に出るとかえって割れたガラスでケガをするなどの危険がある。指示が出るまでその場にとどまってほしいとのことだ。

エレベーターに閉じ込められた場合、三田キャンパスであれば南校舎、大学院校舎、東館、図書館新館にエレベーターチェアが設置されている。中に飲料水やトイレットペーパーなどの非常用品が収納されており、救助まで安全に待機できる。

キャンパスには災害への様々な備えがあるが、最終的に必要なのは、緊急時に冷静な行動がとれるよう、自分で備えることだろう。その助けになるアイテムとして、塾生に毎春配布される防災マニュアルがある。災害時の対応の仕方だけでなく、安否確認の連絡や準備すべき防災グッズのリストなどが記載されている。今後は、より携帯しやすくするため、厚みを減らし、防水素材にするなどの改善や、スマートフォンからアクセスできるような仕組みの拡充も進んでいる。

管財部の担当者は「災害が起きたときどう行動するか、日頃から考えていないととっさに行動できない。1年に1回でも、どう行動するかを頭に入れる機会を作ることが重要」と話す。日頃から災害の知識を学び、周りの防災を知ることが少しでも不安を取り除き、自分の身を守ることにつながるだろう。

(石嶺まなか)