先月27日に行かれた野球の早慶戦1回戦で、岩田遼くん(13)が始球式に登場しました。遼くんは野球が大好きな中学1年生。成長軟骨に異常がある病気で、一般の野球クラブに参加しづらいため、Being ALIVE Japanの事業を通して、今年8月から慶大野球部員とし​​て活動している。

Being ALIVE Japanは、2016年に現代表の北野華子さんが設立した特定非営利活動法人だ。現在までにスポーツチームとのマッチング事業「TEAMMATES」、小児医療センター内にある院内学級事業「TEAMMATES in Hospital」、地域のコミュニティと連携した「TEAMMATES in Community」の3つの事業を行っている。今回、北野華子さんに岩田遼くんと慶大野球部をつないだ「TEAMMATES」事業について話を聞いた。

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―Being ALIVE Japanを立ち上げたきっかけはなんですか。

私自身が学童期に長期療養をしていまして、その経験から設立にいたりました。もともと体を動かすことが大好きだったのですが、療養生活で運動を制限されてしまいスポーツに参加することができませんでした。しかし、「もう一度元気になって体を動かしたい」「もう一度思いっきり走りたい」という気持ちが、病気を治すモチベーションにもなっていました。スポーツには、体力を戻すことや治療の目標になるだけではなく、子どもたちが自信を持つきっかけになったり、人と人をつなげたりする力があると思います。こういった力があるスポーツで、長期療養を必要とする子どもたちに青春時代を作ってあげたいと思っています。

―長期療養中の子どもたちにとってスポーツとはどんな存在なのでしょうか。

「遠いもの」ではないけれど、非常にチャレンジングなものだとは思います。入院中や療養中は、体を動かす機会がなかったり、制限がかかったりするので。

―TEAMMATESとはどういう事業なのか教えてください。

スポーツチームへの入団を通じて、長期療養を必要とする子どもたちの退院と復学、最終的には自立を支援する活動です。

長期療養を必要とする子どもたちは、全国に約25万にいます。昔と比べて医学が発展し、入院期間がすごく短くなったり、今まで助けられなかった命が助かるようになりました。その一方、多くの子どもたちは退院しても前と同じ日常生活を送れるわけではありません。何かしらの制限を抱えながら、そして通院治療を続けながら学校生活、日常生活を送っています。退院をして日常生活に戻る過程で、体力が落ちてしまったり、制限がかかってできないことが増えてしまい、自信を無くしてしまう子もいます。また、入院をしていたことで友だちとの関係が希薄になってしまい、社会性が落ちてしまう子もいます。こうした子どもたちにどういった支援ができるかを考えた中で、スポーツチームとのマッチング事業を始めました。スポーツチームへの入団は、子どもたちに外出する機会を与え、仲間と一緒に何かをする経験や、チームの中で役に立つという経験を与えてくれます。

―現在の活動について教えてください。

現在の活動の中心は、男子プロバスケットボールリーグ(Bリーグ)のチームとのマッチング事業です。昨年の11月15日から今年の5月5日まで、アルバルク東京に当時7歳の人形櫂世(ひとかた・かいせい)くんが入団しました。今年は大阪エヴェッサに森川遥翔(もりかわ・はると)くん13歳、レバンガ北海道に阿部真楓(あべ・まなか)ちゃん7歳が入団をして活動しています。

Bリーグの他には、昨年、社会人アメリカンフットボールクラブ・ノジマ相模原ライズに八木剛道(やぎ・ごうどう)くん9歳が入団をしていました。大学スポーツでは、慶大野球部に入部した遼くんが初めてとなります。

―活動をしている子どもたちはどのような反応ですか。

自信がめちゃめちゃついています。アルバルク東京に入団した櫂世くんは、家で「できない」という言葉を言わなくなったそうです。「とりあえずやってみよう」「これはできなくてもこれはできる」といったような考え方に変化があったようですよ。あとは、アルバルク東京に入団した際に、櫂世くんが作ったドリンクを選手が喜んでくれたという経験から、家でお手伝いを積極的にするようなったとか。

また、TEAM MATESの活動に参加した子どもたち同士も、どんどん仲良くなっています。先日の野球の早慶戦にも、櫂世くんや剛道くんが一緒に観戦していました。

新しく入団する子がいると、櫂世くんのほうからメッセージを送ってくれたり、遼くんの入団の時なんかは、インタビュアーとして取材をしてくれました。

修了した後も、何かしらの活動に携わってくれています。

―今後の活動はどのように考えていますか。

大学スポーツチームとのマッチング事業を増やしたいというのが今のゴールです。プロの選手は憧れではあるのですが、子どもたちにとっては目指すことができないところにいます。一方で、大学生は子どもたちにとっては目指すことのできる良い目標なんです。

あとはやっぱり子どもたちの復学や進学を目標としているので、学生生活を見せるということは非常に重要です。「学生生活ってどんなことをやっているんだろう」「学生同士でどうやってコミュニケーションをとっているんだろう」ということを実際に近くで見ることで、進学のモチベーションを高めたり、学校の楽しさを感じたりしてもらいたいです。

―活動の対象年齢はどのように考えていますか。

一応5歳~18歳までとしています。高校生までを対象にした理由は、やっぱり復学や進学につなげてほしいからです。

高校生までは毎日授業に出ないといけないので、病気療養で休みがちになってしまったりすると、友だちとの交流がなかなかできなくなってしまって、学校へ行くのが嫌になってしまう子もいるんです。そうして大学には行かなくていいかなと思ってしまいがちなんです。だから大学っていうところのハードルを少しでも下げてあげたいという思いがあります。

大学は高校までとは違って、毎日決まった時間に授業に出なければいけないわけではありません。自分で授業も選択できるので自分のペースで学校に行くことができます。また、みんながみんなガリガリ勉強しているかというと意外とそうでもなくて、みんないろんなことをやっているじゃないですか。病気のある子どもたちはとても頑張ってしまうという側面があるので、少し力を抜いてもいいんだよというか、勉強をする人もいればしない人もいるし、いろんな学生がいていいんだよっていうことを教えてあげられたらなと思っています。

―最後に今後の目標をお願いします。

来年は、「目指せ大学スポーツ10チーム!」です。たくさんの大学スポーツチームに参加してもらいたいですし、まずは大学生の皆さんをはじめ、全国の皆さんに私たちの活動を知っていただきたいです。

(聞き手=鈴木里実)

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