「ポーニョポーニョポニョ さかなの子/青い海からやってきた」

「マル・マル・モリ・モリみんな食べるよ/ツル・ツル・テカ・テカ明日も晴れるかな」

このキャッチーなフレーズを覚えていない人はいないだろう。この頭に残る歌詞を口ずさむと自然に、手が動いてしまうのではないだろうか。

『崖の上のポニョ』『マル・マル・モリ・モリ!』の振付けを担当したのは、 シンガー・ソングライターであり、振付師の濱田“Peco”美和子さんだ。なぜこれらの振り付けは、一世を風靡するほどに誰もが踊るようになったのだろうか。

スタジオジブリのアニメ映画『崖の上のポニョ』の主題歌の振り付けでは、全国の小さい子供が踊れるような振り付けを考えたという。

濱田さんは「ポニョ」という柔らかい単語の響き、手でものを優しく握るというイメージを大切にし、サビのキャッチーなフレーズを中心に振り付けた。その他の部分は、はっきりと振り付けを決めないことで、自由に踊れるように工夫した。また、手をつなぐ振り付けが登場するが、隣の人と「手をつなぐ」という行為が普段恥ずかしくても、ダンスであれば自然とできる。振り付けを通じて、友達や親子の絆が広がるのである。

『崖の上のポニョ』から3年後、濱田さんはフジテレビ系ドラマ『マルモのおきて』の主題歌の振り付けを担当する。「ポニョの振付師だったら大丈夫」ということで依頼が来たという。

サビの「マル・マル」というフレーズは、両手で砂場の泥を「丸める」ような子供が普段とっていそうな動き、「モリ・モリ」で山が高くなっていくような動き、言葉通りでリズムの取りやすい振りを考えた。またここでも、二人の子供が一緒に手を合わせる振り付けを入れ、「相手がいる」ということを最大限生かした。

濱田さんは、これらの振り付け以外でも、誰もが楽しめて一体感を得られるようなダンスを作っている。「ちょっと困難なところがあっても、それをクリアした時のみんなの笑顔を大切にしています」

日常生活においても、思いをまっすぐに伝えること、まっさらであることを大切にしている濱田さん。シンガー・ソングライターとしても、「言葉」や「想像力」を大切にしている。

「ただ手を振っているだけでも、それをお客さんが一緒に真似したら何万人もの人々の一体感になる。それはダンスのすごさだと思う」

アーティストのステージにおける演出の振り付けを考えることも多いという濱田さん。もともと踊りがメインのアーティストではなくても、ライブで踊るのを楽しみにしているファンの方も多いのだという。

「Singing, dancing, and smilingが自分の中のモットーです」

「うきうきする」「わくわくする」といった、感情の高まりを伝えるシンプルな手段としてのダンスは、あらゆる人の心を揺り動かし、世代を超えて踊り続けられるのである。

(下村文乃)