先月14日は、1‌8‌7‌2年に日本初の鉄道が新橋-横浜間で開業した日だ。それから約1‌5‌0年間、日本の鉄道は北海道から沖縄まで敷設され、新幹線開業や民営化など、様々ことを経験してきた。

翻って現在、IT技術が進歩していく中で、交通技術は、自動車を中心に自動運転化の風潮にある。

かくいう鉄道も、ゆりかもめや日暮里舎人ライナーなど、自動運転が実現されてきた。だが、それらは近年自動運転を前提にして敷設された路線だ。山手線や中央線など、古くから存在している路線はいまだ運転手に頼るところが大きい。というのも、既存鉄道においては自動運転を導入するハードルが高いのだ。

東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー専攻の水間毅特任教授によれば、既存の鉄道の自動運転化には、今までと同等かそれ以上の安全性が保証されていることが必要だという。鉄道は自動車と比べて公共性が高い。そしてより多くの人を運ぶ、という点で乗客の安全性を確保するという責任があるためだ。

水間特任教授は、「自動車の技術をそのまま導入することはできない」と述べる。「安全性と信頼性が担保されたもののみを利用していかなければならない」

自動運転化は、今まで運転手がやっていた仕事をすべてシステムが担うということだ。鉄道の運行では予期せぬ障害物や天候の変化など、実に様々な条件に対応しなければならない。 システムの構築には多大なコストがかかるだろう。大きなコストは自動運転導入の大きな障壁となり、自動運転の発展の阻害となりかねない。

その時、自動車の自動運転技術を積極的に利用していくことにはメリットがある。システム構築にこれまでの技術を応用し、コストを下げられる可能性があるからだ。赤字に喘ぐ地方の鉄道路線の救世主となるかもしれない。

ところで、既存の鉄道が自動運転化した場合、どのようなことが起きるのか。例えば以下の二つが挙げられる。

一つは、ダイヤ乱れの際に行う対応の変化だ。既存のシステムでは、ダイヤが乱れると運転手が確保できずにさらに遅れることがある。水間氏は「ダイヤ乱れの回復がよりフレキシブルにできるだろう」と語る。

もう一つが、ヒューマンエラーの防止である。過去の事故の原因として、信号冒進や速度超過など、人為的なものもある。自動化によってそれらの防止が可能だ。

また、路面電車に導入すれば、周囲の自動運転車と連携して、接触事故を未然に防げる。鉄道と他の公共交通機関を連携させれば、待たずに乗れる公共交通が実現するかもしれない。

しかし水間氏は「これらの実現にはシステムの安全性と安定性が第一だ」と強調する。「壊れても対応できるようなシステムにしていなければならない」と語った。今後、自動運転技術はさらに進化していくことだろう。それはどのような技術であれ、鉄道に大きな変化をもたらすことは確実だ。

(伊藤周也)