秋の夜長にウイスキー 専門店店主が語る

「目白田中屋」店主・栗林幸吉さん

紅葉の候。夜が長く感じられるようになり、読書をしながらウイスキーを味わうのも粋な季節だ。だが、ウイスキーは少し敷居が高い、と思う人もいるのではないだろうか。記者はウイスキーの魅力を知るため、東京・目白に向かった。

「ウイスキーにはロマンが詰まっている」。こう語るのは、世界でも有名な酒小売店・目白田中屋の店主の栗林幸吉さんだ。「ウイスキーの良し悪しはたくさん飲まないと分かるようにはならない」。ウイスキーに慣れていないうちは飲める範囲でいいからたくさん飲んでほしいと話す。飲むうちにだんだん種類による味の違いも分かるようになってくるという。

栗林さんはおいしいウイスキーを求め、世界中を飛び回わっている。ウイスキーの醸造所は人里離れた場所にあることが多い。というのも、ウイスキーは自然環境によって大きく変わるからだ。記者もいくつかのウイスキーを試飲したが、アイラ島のボウモアはスモーキーな香りが口いっぱいに広がった。アイラ島ではピートが多く採れ、ウイスキー作りにふんだんに使われるためだ。

いくつか試飲した中でも、グレンドロナックは最も印象的だった。強すぎることもなく、口の中でふんわりと広がるウイスキー特有の余韻が特徴だ。この「余韻」とはウイスキーが長い時間をかけて熟成されできたものだ。

この「余韻」を求め、ウイスキー製造会社はウイスキーを振動させたり、化学変化を与えたりすることで、時間をかけずに熟した味を再現することを目指してきた。だが、いずれもことごとく失敗に終わった。樽に入れて長い間熟すことでしか本物の味は作ることはできないからだ。「時間はお金では買うことができない」と栗林さんは話す。

それゆえ、ウイスキーの熟成は百年もかけることも少なくない。現在作っているウイスキーを、作り手は飲むことができず、封を開けるのは孫の世代ということさえある。

また、80年もの時を越えて理想のウイスキーを製造する人もいる。北海道厚岸町は、冷たい土地と海風がウイスキー作りによく合っている場所だ。およそ80年前、ニッカウヰスキーが日本で初めて蒸留所を建設する時の候補地だったが、当時は湿原地帯で建てることができなかった。時代が進み、現在の建設技術によって理想の蒸留所、厚岸蒸留所が完成したのだ。

長い時をかけて作られるウイスキーと、その味を求める製造手をめぐるドラマは大きな魅力だ。ウイスキーの大きなロマンが、心を満たしてくれる。

いろいろなウイスキーを試すことで、余韻を味わいながら、ウイスキーのロマンを理解できるようになれば、秋の楽しみも増えるはずだ。

(椎名達郎)

目白田中屋

東京都豊島区目白3‐4-14
(JR目白駅徒歩1分)
日曜定休 営業11:00~20:00


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