慶應義塾図書館が所蔵する数多くの貴重書を展示する「慶應義塾図書館貴重書展示会」が今月3日から9日まで丸善・丸の内本店4階ギャラリーで行われた。第30回を迎えた今年は「インキュナブラの時代 慶應義塾の西洋初期印刷本コレクションとその広がり」と題し、多くのコレクションが展示された。

インキュナブラとは、「活版印刷術の発明から15世紀末までに、金属活字を用いて印刷された書物」のことである。東洋では19世紀まで木版本が主流であったのに対して、西洋では活版印刷術が瞬く間に広がり、それが広範に及ぶ社会的影響をもたらした。

「活版印刷術の発明にで本の大量生産が可能となり、書物という形で知識が広がっていった。加えて、識字率の向上・聖書の翻訳・宗教改革・古典の復興・科学の発展など、社会に与えたインパクトは大きい。これが、活版印刷術が三大発明の一つとされている理由だ」と慶大文学部の安形麻理准教授は説明する。

展示では、活版印刷本が写本の伝統を引き継ぎつつ独自の変化と工夫を経て現代の書物のルーツとなった様子が強調されていた。インキュナブラが現代に与えた影響を垣間見ることができる。