数十の質問に答えるだけで自分の性格を教えてくれる「性格診断」。まだ知らない自分を知ったり、自分の性格を再確認したりする場面は、やったことがある人なら思い当たるはずだ。しかし、ただ楽しんで終わるのではなく、個人の診断の結果を活用する方法を提供する側は画策している。「性格を科学する」というキャッチコピーのもと、無料で性格診断を配信している、株式会社m-gramの代表、松村有祐さんに話を聞いた。

エムグラム診断は結果を八つの成分で表し、SNSで気軽にシェアできるのが特徴の診断である。会社の採用などに使われる業務用の診断システムを使用しているため、かなり精確な結果が出るという。

もともと、エムグラム診断はマッチングサービスのために作られた。マッチングサービスといえば、主に顔を用いるサービスはすでにあったものの、エムグラムでは内面でつながることが目指された。「顔ではなく中身でつながることができれば、よりリアルな出会いになるであろう」という考えからだ。

しかし、マッチングサービスを広めようとしていくうちに、松村さんは性格診断の他の可能性に気付いたという。「新しい関係を作るためだけでなく、今ある既存の関係をより良くするためにも使えること、またそちらがユーザーの求めているものではないのだろうかと思い始めた」

性格診断を利用して、あるカップルの問題を解決したことがある。彼氏が自分の話を聞いてくれないために、自分のことを好きでないのではないかと彼女は悩んでいた。しかし、彼氏に性格診断を行ってみると、彼は彼女の話を聞いていないわけではなく、他人の話をあまり聞かないタイプだったと判明した。性格を知ったことで、二人の間にあったわだかまりが解消したのである。

また人間関係の改善を通して、社会問題の解決にも役立てようとしている。慶大大学院システムデザイン・マネジメント研究科で幸福度の研究にあたる前野隆司教授と、博報堂、m-gramで行っている、「ソロもんラボ」というプロジェクトだ。未婚率・離婚率の上昇や高齢独身者の増加などにより、いずれ訪れるであろう、「超ソロ社会」にこのプロジェクトは焦点を当てている。m-gramでは家族や職場以外の「人のつながり」が大事になると考え、独身生活者の人間関係や就活、趣味などのマッチングを支援していこうとしている。

今や退職の原因の上位に入る、人間関係の悪化。ミスマッチを防ぐため、入社試験で性格診断テストを課す会社もある。かつてのように「占い」としてでなく、科学的な根拠をもつものとして、性格診断は新たな地位を現代社会で確立しつつある。

(小林操花)