「謎解きは初めてでも経験があっても楽しめるんです。何回もやっていても成功しないことだってあります」

ひらめきや頭の柔軟性が試される謎を次々に解き、一つの物語を通じてゲームをクリアする。物語に入り込んだ参加者を、ミッションを乗り越える爽快感で魅了する「体験型謎解きイベント」は、この10年ほどでじわじわと人気を集め、規模が拡大している。塾内にもこのイベントの企画を通して活動の場を広げるサークルがある。2‌0‌1‌2年に設立されたK-dush2(ケーダッシュツー)だ。

代表を務める永井裕人さん(理2)は、サークルに加入してから謎解きイベントに引き込まれたと話す。謎を考案するだけでなく、実際に謎解きイベントで遊ぶ活動もあり、一緒に謎を楽しめる仲間がいることに、この会の魅力がある。

謎解きイベントと一口に言っても、形態によって主に三つの種類に分かれる。比較的大きな室内で、4~6人一組、6グループ前後に分かれて行う「ホール型」、少人数が小さな室内にある道具(ヒント)を用いて謎を解く、いわば脱出ゲームに近い「ルーム型」、街中を歩きながら謎解きをするように設計される「周遊型」である。K-dush2ではホール型を中心に、三田祭や矢上祭で公演を行うほか、最近では企業からの依頼を受け、ラジオなどの媒体も用いながら謎解きを企画している。

イベント企画は公演の約2カ月前から始まることが多い。会議でイベントのテーマ案を持ち寄り、物語の核となる部分を決める。物語は謎解きと密接な関係を持つ。これまでには「アイドルと握手をすることがゴール」のゲームや、「忍者になって城から宝を持ち出す」ゲームなど、自由度の高い物語が展開されてきた。

物語の世界観を最大限に生かすのが謎解きの見せ所だ。小さな謎から導き出したキーワードを組み合わせていき、中盤には物語に新展開を与え、最後のクライマックスにボス戦とばかりに最大の謎を散りばめる。物語と表裏一体に進む謎解きは、先へと読み進めようとする者に試練を与える。

もちろん、参加者が壁にぶつかった時は必要に応じてヒントを与えることも企画者側の役割だという。「せっかくなら最後の謎まで解いてほしいから」。謎解き初心者や子どもにも楽しんでもらえるよう、ヒントカードを準備している。

世界観を彩るのは謎解きだけではない。脚本、参加者を助けるキャスト、デザイン、音楽など、問題を作る作業も含めて多様な才能が集まる場である。集まる学部もさまざまで「変な人が多いですかね(笑)」と永井さんは話す。

今年の矢上祭、三田祭でもイベントを出展する予定だ。謎が解けてゆく爽快感は進化し続ける。次なるイベントへ向け、彼らは次なる仕掛けを計画中だ。

(杉浦満ちる)