とけた電球は、慶應発の3ピースロックバンドだ。どこか切ない歌詞と中毒性の高いサウンドが人気を集めている。メンバーは岩瀬賢明さん(Vo&Gt)、境直哉さん(Key)、高城有輝さん(Dr)の3人だ。彼らは慶應義塾高校のマンドリンクラブで出会った。最初はコピーバンドだったが、ライブハウスのオーナーに勧められオリジナル曲を作り始め、現在はCDリリースやワンマンライブなど積極的に活動している。

彼らはどのような学生生活を送っていたのだろうか。バンド活動をつづけながら、大学とどのように向き合っていたのだろうか。

 

ボーカルの岩瀬賢明さんは、大学に期待していなかった、という。期待感の低さから、最小限しか大学に通わなかった。一方で、大学生活に対し後悔もしているそうだ。

 

岩瀬「もう少し大学をうまく使えばよかったかな。仲のよさは別として、繋がっていた方がいい人をうまく作る場所なのかな、と。薄い関係って結構バカにされがちだけどいつ薄い関係が濃い関係になるかも分からないし、そういうのを見つける場所だと思います」

慶大の就職率は毎年約8割となっている。金融業界や商社などのいわゆる「一流企業」に就職する学生が多い。カルチャーの道に進む塾生は少ない。その中で、音楽の道を選んだ岩瀬さんは、大学で生きづらさや劣等感を感じていたそうだ。

 

岩瀬「大学四年間サークルとゼミに入って就活して就職して、というのが普通の人生だとしたら、僕が行こうとしている人生はそういう人生じゃないから劣等感があります。慶應ってカルチャーが弱いので、慶大生はもっと自由に、カルチャー的なマインドを持ってくれたらみんなが好きなことをできるようになると思います。バンドをやっていることも周りに言いにくかったですね」

 

また、「慶大の自負」という観点で岩瀬さんは慶應での生活をこう評する。

 

岩瀬「慶應の自負が強くなると排他的になると思っていて。他を許容できるような、自由にやっている人を応援するマインドがある人がもっとたくさんいたらもっと楽しい学校だったと思います」

 

彼らはバンド活動の中で、大学に進学していない人達と関わる機会も多かった。その経験から、大学に行くだけが道ではなく、大学に行かなくても幸せなのではないかと感じたそうだ。

一方で、何をするにも楽で自由度の高い大学生としての恩恵も受けた。慶應にいる中で、仲間意識の強さが彼らの助けにもなった。

 

「何かをするにあたって、団結する一つの理由が『慶應』というのはすごく強いと思います」

 

今後の目標は、バンドを続けることであると3人は語る。

 

「当面の目標はバンドをやり続けることです。続けるってことは難しいし、そのためにやらなければいけないことも沢山あるので」

 

岩瀬「慶應が大好きだから、僕らより下の世代のバンドがもっと出てきやすいようにしたいです。僕らがもっと大きくなって好きなことを続けている後輩たちが出てきやすいように、慶應でも自信を持って好きなことを続けていける、ということをちゃんと示したいですね」

 

高城「何か一個に絞らなくても、二足の草鞋でいいと思うし、好きなことを続けていけると思います」

 

「これがやりたいっていうものがある人が慶應には少ないのかなって。これがやりたいって言いやすい環境だったらいいのに、と思いますね」

最後に、塾生に向けてメッセージを語ってくれた。

 

岩瀬「絶対にやりたいことは見つけた方がいいと思います。やりたいことを見つければ割と頑張れるので。人との出会いを大切にしつつ周りに飲み込まれずに自分のやりたいことを見つけられたらいいのかなと思います」

 

高城「好きなことを続ける上で、人と違うことがすごく不安になることも沢山あると思います。でも、楽な生き方をし続けても何も得られません。責任を持って、いろんなことに挑戦してほしいです」

 

皆さんは自分の好きなことができているだろうか。周りに流されるままに大学に進学した塾生も多いのではないだろうか。今一度、自分のやりたいことは何なのか、彼らの音楽を聴きながら考えてみてはいかがだろうか。

(長岡真紘)