法務省は先月11日、今年の司法試験合格者を発表した。今年は5‌2‌3‌8人(前年比7‌2‌9人減)が受験して、1‌5‌2‌5人(同18人減)が合格し、全体の合格率は29・1%(同3・2ポイント増)だった。慶大法科大学院からの合格者は、受験者3‌0‌1人(同16人減)に対し1‌1‌8人(同26人減)で、合格率も39・2%(同6・2ポイント減)と、前年よりどちらも減少した。慶大は合格者数で大学別3位、合格率は同6位となった。

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司法試験に強い慶大のイメージに影が見られた。慶大は前年まで2年連続合格者数でトップを記録していたが、今年はそれが崩れたかたちとなる。コース別の合格率を見ると、既修者コースは46・7%、未修者コースは25・0%で、両者の開きは大幅に減少した(前年差39・0ポイント)。全体の合格率は増加したが、慶大の合格率は減少した。合格率が4割を切ったのは、06年の現行の司法試験制度が開始されて以降、初めてである。

慶大大学院法務研究科委員長の北居功(きたい・いさお)教授によると、合格者と合格率の減少要因は、修了者のうち初年度に受験した人の合格率が格段に下がったことだという。一方で、予備試験を経て受験する人の増加により、法科大学院からの受験者の減少も影響として大きい。

近年問題とされているのは、法曹志望者の減少傾向だ。そのあおりを受けるように、全国の法科大学院が廃止または学生の募集を停止している。最大74校あった法科大学院のうち、19年度に学生を受け入れるのは36校の予定となっている。

志望者減少の背景には、リーマン・ショック後、司法試験に合格しても弁護士として働く先がないというネガティブな報道が当時流れたことがある。しかし、北居教授は現在では弁護士の働く先に困るような状況はまったくないと話す。

今年2月、文科省は法科大学院の改善案を提出した。法学部進学者が学部を3年、法科大学院を2年の計5年で法曹を目指す「法曹コース」の設置を大学に促すものだ。これは法曹志望者の時間的、経済的な負担の緩和を図るもので、慶大も同様のコースの設置に対し、すでにカリキュラムなどの具体的な話し合いを行っている段階だ。

今後の司法試験制度の改革について、法務省は現在5月に実施されている司法試験を前倒しにする案を検討中だ。これが採用されれば、学生が在学中に受験して、修了後の4月からすぐに司法修習に入れるようになる。北居教授によると、「こうした改革に対応して法科大学院自体のカリキュラムを見直す必要が出てくる。実施時期はまだ決まっていないが、遠い話ではない」と語った。