ここ最近メディアで取り上げられることの多い記者会見。「日本大学フェニックス反則タックル問題」においての日大アメフト部の宮川泰介選手による記者会見が世論の称賛を得たことは記憶に新しい。

しかし記者会見での対応の仕方を誤ると、事態が鎮静化するどころか批判を浴びることもある。ここでは、人の心を動かす効果的な会見について、考えてみたい。

記者会見はどのように準備するのがよいのだろうか。危機管理広報などを手掛ける株式会社アクセスイースト代表で広報コンサルタントの山口明雄さんは、「緊急記者会見でも、災害・事故と不祥事で開催方法が異なる」と話す。災害・事故の場合、出来るだけ早い段階で一度記者会見を開き、随時状況の変化を報告するのがよい。

一方で、不祥事に関する謝罪会見は、正確な事実を公表し、一度で会見を済ますためにも、出来るだけ万全な準備を事前に行う必要がある。そして会見の開催が決定したら、スポークスパーソン(話し手)を決定する。大切なのは、話し手一人が記者会見の全てを仕切ることだという。同席者の役割はあくまで話し手に対する技術的な助言である。話し手が全ての質問に責任を持って答えることが、信頼回復につながるのだ。

記者会見の演出方法に関しても様々な工夫が可能だ。記者会見に使われるバックボードもその一つ。プロモーションの記者会見で多く用いられる市松模様のバックボードは、アップで撮影されても背景に会社名やロゴが必ず映り込むため、視覚的に企業をアピールすることができるという。

臨床心理士の岡村美奈さんは「記者会見の形式が、会見者と記者の心理状態に効果を与える」と話す。囲み取材では、記者が畳み掛けるように会見者に質問できるため、両者の間で緊張感が増す。対面式の会見では、記者とのパーソナルスペースが離れていて、会見者のストレスが軽減される。そのため、囲み取材の方が本音を聞き出しやすいのだという。

また、ノーカットの謝罪会見における、話し手の表情や行動の変化の中に、話し手の本当の感情が見えてくると岡村さんは指摘する。融資詐欺事件の山田千賀子氏(てるみくらぶ元社長)の謝罪会見が終わった瞬間、俳優の渡辺謙さんの不倫疑惑釈明会見での頭を下げて顔を上げた瞬間、表情に気の緩みが見られた。こうした些細な表情の変化は、意識的には気がつかないように思えるが、受け手の印象には残る。

この事実を意識することに加え、謝罪会見では自分のために泣かないことが大事であるという。てるみくらぶ元社長などは会見で涙を見せていたが、イメージの回復にはつながらなかった。自分が起こしたことに対して泣くということは、被害者の気持ちをおざなりにしていると受け取られるのだ。

メディアによる情報が錯綜する現代。会見の一部はメディアによって強調されうる。先行報道による世論の受け取り方を理解し、受け取り手の目線を意識した記者会見が今、求められるのではないだろうか。

(西岡詩織)